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ハワイ不動産ニュース:宿泊業界が宿泊税課税対象拡大に反対

ハワイを訪れる人達は既に全米で最も高い水準の宿泊費を支払っているが、課税対象が拡大されれば、さらなる出費を覚悟しなければならない。

今年の第1四半期に支払われた1室の宿泊料金の平均は1泊293ドルで、ハワイ観光局によると全米で最も高い価格だという。さらに現在10.25%の宿泊税として1泊につき平均およそ30ドル45セント支払われていることになる。 州の一般消費税4.5%に加えて誕生した宿泊税TATは、これまでホテル、リゾート、タイムシェア物件の客室料金に限定して徴収されており、フィットネス・センターや飲料水、Wi-Fi、電話使用料等に紐づけされた「リゾート・フィー」は対象外とされてきた。しかし州の議員は上院法案2699号を可決。今後はリゾート・フィー、駐車、飲食、スパ、会議室利用料等を含む、宿泊業が関わる全てのサービスが課税対象となる可能性が浮上した。

トラベル・ハワイが5月に実施した調査によると、ハワイのホテル111軒がリゾート・フィーを設定しており、価格の範囲は1日当たり10~46ドル。現行TATの課税対象外である駐車料金は、1日につき9~35ドルだった。法案2699号が法令化されれば、リゾート・フィーと駐車料金だけでも現在よりさらに2〜8ドル多くTATを支払うこととなる。コンファレンスや披露宴等のイベントを開催した場合の増税額はより大きいだろう。

税収の増加法案支持者は、課税対象の拡大によって州の資金に最低でも1100万ドルの増収が見込めると話す。12000人の宿泊業の組合員を抱える「ユナイト・ヒア・ローカル5」はホテルが独自に料金を設定しているリゾート・フィーのみを課税対象とすることには賛成していたが、最終案には懸念を示している。同組合の財務管理者は「顧客の満足度や、従業員へのチップやバンケットの予約等に悪影響となるでしょう」と話す。 労働組合とハワイ宿泊観光協会(HLTA)、ワイキキ改善協会が意見を同じくすることは稀だが、今回はどちらも同じ懸念を抱いているようだ。

可決された法案にデービッド・イゲ知事が拒否権を行使する期限は6月25日までで、決断の前に関係者と面談を設ける予定。知事は法案反対者からの嘆願書にすでに1750名の署名が集まっていると明かした。

HLTAのCEOマフィ・ハヌマン氏は、今年の税収は1億2500万ドルに上ると予想されている現状を指摘し「州に十分な税収が入るのに、何故ホテルや観光客にさらなる負担を科すのでしょうか」と述べた。 観光業を弱体させる可能性 知事が承認すれば法案は7月に発効となる。ハヌマン氏は火山噴火の影響もある中で観光客を減少させる可能性があると語る。「キラウエア火山の噴火が世界中で報道されています。私達は最悪の事態に備え続ける必要があります。訪問者数の記録更新を喜びつつも驚異的な成長が鈍化し始める中で、他の観光先との価格競争による影響に対処しなければならないと再確認させられています」と述べた。また通常の宿泊施設と民泊施設のような代替宿泊施設に課税される税金額の差が大きくなることにも言及していた。

ヒルトン・ハワイの副社長でタートル・ベイ・リゾートでは経営責任者も務めるジェリー・ギブソン氏も法令化に恐れを抱いている。TATが1%増税された1月に続き、ハワイへの訪問を考え直す人が増えると予想している。「加減を間違えると素晴らしい経済政策のはずが、大きな危機となってしまうでしょう」と同氏。州の議会がAirbnb等の代替宿泊施設と課税同意書の締結に達していないことにも苛立ちを示す。「同じ税制や規則の対象とされていないせいで、正当なビジネスとグレーなビジネスの格差は拡大していくでしょう」と加えた。 WIA代表のリック・エッグド氏も法案の最終案のあいまいさに反対で、法案が「リゾート・フィーを事実上ホテルが請求する全ての料金と定義していますが、それはTATが対象とするべき内容とは異なっています」と話す。 イゲ知事はリゾート・フィーのみをTAT課税対象に加える法案の以前のバージョンには賛成を示していたが、最終案に対しては意見を表明していない。

 

(日刊サン 2018.06.23)