食いしん坊の友人がカリヒの韓国スーパー“Hマート”に連れて行ってくれた。 「ホノルルにはいくつもの韓国スーパーや食材店があるけれど、Hマートのキムチが一番おいしいと思う」という太鼓判なのだ。私は編集部のすぐそばにある、キムチの品揃えが豊富でおいしい“Joe Kim’s”が贔屓だった。店は小さいけれど、いかにも商品を大切に扱っている感がありありで、とても清潔、お店の人も感じが良い。白菜、大根、キュウリのキムチはもちろん、山菜のような青菜やエゴマの葉のキムチなど、すべて自家製だ。
野菜の保存食として発達したキムチ、南は辛くて、北は控えめ
そもそもキムチは、冬が極寒の朝鮮半島で、冬の野菜不足を補うために保存食として生まれた食文化だ。朝鮮語で野菜の塩漬けを意味する“沈菜チムチェ”がなまってキムチと発音するようになったのだそう。キムチにする野菜は200種類近くで、白菜だけでも20品種以上といわれる。またキムチと聞くと唐辛子の辛さを思い描くが、もともとはただの塩漬け。16世紀に朝鮮半島に唐辛子が伝来してから、特に南の地方で辛くて赤いキムチが盛んに作られるようになった。だから今も北朝鮮では唐辛子があまり入らない、白キムチが主流なんだという。最近激動の南北情勢で、キムチ境界線も変動していくんだろうか?
Hマートのキムチ、オモニ達が 作りながら、自慢しながら、売る!
ハワイ最高峰のキムチを売っているというHマートのキムチ売り場は壮観。透明の特製ケースに収められたキムチは30種近く! お客は大中小の容器に好きなキムチを好きなだけ入れて買っていく。白菜、キャベツ、キュウリのキムチ、大根はカクテキ、細大根、丸っこい大根、ベビー大根と大根菜とを一緒に漬け込んだものなど4種も!どれがおいしいの?とオモニ(お母さん)に聞くと、食べてごらんと爪楊枝を渡してくれる。付き添って案内もしてくれる。そしてなんと、売り場の傍で、キムチを仕込んでいる!後日再訪したら、別のオモニもせっせと作っていた。もしかしてキムチ売り場のオモニは全員、キムチ作りの先鋭部隊!?素晴らしきかな、Hマート!
世界の3大珍味にランキンさせたい、チャンジャ、おいひ〜〜〜
キムチ売り場にはコリアン珍味も豊富だ。明太子、イカやタコの辛い和え物、そして私が大好きなチャンジャ!原料は魚のタラの胃腸。それをコチジャンや唐辛子やニンニクやゴマなどで和えたのがチャンジャ。コリコリとした食感がクセになるおいしさでたまらない。タラの胃腸がこんなにもおいしい、ということを発見してくれたコリアンの同胞に最大級のお礼を言いたい。Hマートのオモニ達が作るチャンジャには、タラの胃腸がたっぷり使われている。そして新鮮だ。ダントツ一等賞、ありがとうオモニ!キムチやチャンジャの熟成で生まれる乳酸菌には整腸作用がある。材料の唐辛子には、胃液の分泌促進、消化を助けるカプサイシンが多く、またビタミンAとCの含有量も多いため、抗酸化作用を通じて老化を抑制する健康食品でもある。全米最大手韓国スーパー、HマートのHは朝鮮語の“ハナルム”。一抱え、どっさり、という意味なのだという。カカアコに2号店を出店する話しもあるので、近くにできたら、新鮮なコリアンフードをどっさり買えて嬉しいな。
(日刊サン 2018.05.11)
奥山 夏実 おくやまなつみ ライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、2017年ハワイに移住。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |