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アメリカ横断

 

仲のいい友人夫婦とダブルデートをしようと、4人でイタリア料理を食べに出かけたときのこと。ワインを飲みながら、アートの話やらこれからの世界がどうなっていくかなど話が弾むにつれ、話題は人生でやり残していることについて移っていった。  

 

やりたいと思っていたのにまだ実現していないことを一人が語り始めると、「実は、〇〇をやってみたかった〜!」とか「いつか、何処どこへ行ってみたいとおもってる〜!」などと盛り上がった。 やり残していることの中に「旅」に関することがとくに多かった。わたしは、人生終わるまでに一度、車でアメリカ横断をしたいという願望が高校生の頃からあった。それは、当時大きな衝撃を受けた映画、テルマ&ルイーズに影響されているところがある。今、アメリカに住んでいるから実現させようと思えばできるのに、なぜか今まで行動していなかった。それは、「いつでもいけるしな〜」っていう気持ちがどこかに常に存在していたからなのかもしれない。東京在住の友人が一度も東京タワーに上ったことがないって言っていたのを聞いたことがあるけれど、それに近いものがあるのかもしれないって思った。

 

旅のはなしで3人が盛り上がる中、わたしの頭の中は「アメリカ横断」のことでいっぱいになってきた。やりたいことがあってそれを実現できるのにも関わらず、「また、いつか実現できたらいいわ〜」って放っておくことがキライなわたしなのに、まだ実現させていないことが山ほどある!  アメリカ横断のことを3人にすると、「いいね〜! それならキャンピングカーでいこうよー!」とジェニファーが言った。ジェニファーのお母さんは、当時75歳のときに69歳だった友人と2人で車を借り、たったふたりでNYを出発。LAまで行ってまた車を運転してNYに帰ってくるという約3週間のアメリカ横断往復の旅に出掛けたそうだ。75歳と69歳。女性がふたりで来る日も来る日も車を運転して、砂埃の舞う一本道しかない荒野を何時間もひたすら車を走らせ、広大なアメリカを横断していく姿を想像してみた。まさに、テルマ&ルイーズだ(笑)!高齢の女性ふたり。容易に「そんなこと、やりたいけど無理だわ」って言ってしまっても自分も含めて誰もが納得する歳だと思う。でも、このおばあちゃんふたりは、実行に移したなんてかっこ良すぎる!!!その後、わたしたちはアメリカ横断を実行することを決めた。人生、まだまだ未知なる楽しみはたくさんある。いくつになっても、おもしろいことはまわりにたくさん転がっている。今はもうこの世に存在していない会った事もないこの二人のおばあちゃんから、わたしは大きな刺激を貰った。

 

(日刊サン 2018.04.11)

 

大森 千寿

香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。 www.chizuomori.com