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旅とわたし

このコラムも連載100回目となりました。いつもお読み頂いているみなさま、ありがとうございます!

 

100回を重ねることができたということで、自分の旅の原点を考えてみました。みなさんは生まれて最初に「旅」へ出たのはいつですか?電車に乗って、隣町へ行ったことかもしれませんし、家族で旅行へ出掛けた事かもしれません。人それぞれ、「旅」という言葉に対しての感覚が違っているからなお、旅はおもしろい。わたしの最初の「旅」は、まだ母親のお腹の中にいた頃。もちろん、記憶にはない。母がわたしを妊娠中に、父とよくドライブに出掛けていたと子どものころからわたしに語っていた。自分が生まれる前から両親はよく旅をしていたらしい。そんなふたりの旅の話を聴くのが幼い頃のわたしはとても好きだった。多分、自分の旅好きはそういった環境が大きく影響しているのだと思う。  

 

次に、自分が記憶している中で強烈に覚えている「旅の原点」と自覚しているのは、韓国ホームステイ。8才の時に、いきなりの海外旅行。しかもひとりで。知らない韓国の家族のもとへ夏休みホームステイへ。当時、難しい家庭環境に育っていたわたしは、旅をとおして一人で生きていく力をつけるためにと、母親の考えで、お隣の韓国へとひとり送り出された。母が韓国を選んだ理由は当時、韓国語にハマっていたこと。そして、日本から一番近い外国だからというシンプルな理由だったらしい。顔や街の雰囲気はなんとなく自分の知っている日本と共通する点があった。しかし文化が違い話している言葉が違う。衝撃だった。結局、韓国の家庭で過ごした約1カ月、わたしは日本語とジェスチャーそして覚えていった片言の韓国語、多分10語くらいで乗り越えた。ことばは通じなかったけれど、心は通じた。伝えようとする何かを通してお互いがその何かを感じ取り、エネルギーは交わることができるのだと体験した。言葉の大切さをそのときにすごく学んだし、伝えようとする気持ちを持つ事の大事さも学ばせてもらった。

 

旅に出ると、今までの自分の世界が大きく広がる。新しい場所へいき、新しい人に触れいつもと違う食べ物をたべてみる。すべてが新鮮だ。わたしは、離婚をして辛かった時にしばらくアメリカへ渡った時期があった。仕事もやめて、ひとり国外へ行ったわたしに「逃げるのはよくないよ」と話してくれた友人もいた。でも、違う。「旅」という行為はけっして逃げてるのではない。その逆。生きることをあきらめてないで、新しい可能性を自ら探しているのだ。人生において現実からすこし離れる非日常時間は、貴重な財産になっていく。これからも、人生の旅を思いっきり楽しんでいきたい。

(日刊サン 2018.03.28)

 

大森 千寿

香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。 www.chizuomori.com