【日刊サンコミュニティニュース】
「古代フラから引き継がれるフラの精神は、天と地と人を結ぶ、アロハの祈り・癒しです。だから私たちのハーラウでは、フラを始める前に必ず身体をリセットします。まず、身体を右に左に揺らしながら、自分の真ん中、センタリングを確認します。それから足を地に着けるグランディング、そして深呼吸です。ニュートラルであること、これは人生でもとても大切ですよね。フラはダンスの枠では捉えきれない、フラはライフスタイルなのです」
フラはダンスではなく人生そのもの、 正統フラを伝承する、日本人クムフラ
静かな佇まいでそう話すのは、クムフラ(師匠)のカリコラウさん。正式なハーラウ(フラ教室)の名前は、Kūhai Hālau o Kalikolauʻōlenaokalani pā olapa kahiko、“天国で芽吹いた清めのウコンの新芽”という、ちょっと長いけれどきれいなハワイ語の響きと内容の名前だ。そしてカリコラウさんは長い黒髪が美しい日本人。
「2年間をかけて、クムフラの修行をしました。修行中は髪を切ってはいけないんです。髪にはマナ(森羅万象のエネルギー)が宿るからです」
カリコラウさんの師匠は、フランク・カワイカプオカラニ・ヒューエット氏。フラの世界では知らない人はいない、たいへん有名で人望の厚い、フラ界の重鎮だ。ソングライターでもあり、彼が作った多くの歌は、フラの名曲として愛されている。また、ハワイ州政府公認のカフナ(治療者)であり、公的セレモニーのチャンター(祈りの唱え人)、ハワイアンルネッサンスのオピニオンリーダーでもある。
「カネオヘ出身ですが、ハワイ島キラウエア火山の近くにハーラウ兼ご自宅があります。クムフラのウニキ(免許皆伝)を受けるには、1年に5回、1週間ずつハワイ島で合宿をして卒業訓練をします。踊りだけではなく、ハワイ語のチャントや歌、楽器も学ぶので、私は2年かけてじっくりウニキをしました。ただクムフラとしての修行は一生続くと思っているので、これからも日々学び続けます」
ダンスやエクササイズのフラではなく、雨や風にさえ神々が宿るというスピリチャルな、ハワイアンの叡智を伝承している、カリコラウさんのような日本人のクムフラは稀有だ。 「ハワイ語のチャントの意味や、曲にふさわしいレイの作り方など、フラの伝統を日本語でちゃんと伝えられることはメリットでもありますが、ハワイの風土で育っていないというジレンマもあります」
日本で生まれ育ち、カリフォルニアの大学を卒業し、そのままアメリカでインテリアデザイナーとして活躍してきたカリコラウさん。
「フラは突然、なにかすごい力で、“フラをやりたいっ”と打たれたように感じて始めました。2005年からですね。入門したハーラウがヒューエット先生の傘下のハーラウだったんです。楽しくて、夢中で学びました。ヒューエット先生がカリフォルニアでワークショップを開かれる時も必ず参加して。私の人生の中心に定まり、もっと本格的にフラを学ぶために、2014年にハワイに移住しました。日本人の私がおこがましいけれど、これまで授かってきたフラの伝統を少しでもお伝えできればと願っています」