皆さんで記念撮影、ありがとうございました!
あなたが子どもの頃、好きだった童謡は? あるカラオケメーカーが、よく歌われる童謡のランキングを発表している。第1位は『おにのパンツ』で、フニクリフニクラの火山列車のイタリア歌曲をメロディーに、「おに〜のパンツは強いぞ〜強いぞ〜♪」と元気にユーモラスに歌い上げる曲だ。2位は『おもちゃのチャチャッチャ』、3位は『かえるの合唱』と続く。
日本国際童謡館の館長、 大庭照子さんが1996年から慰問活動
先週ハワイで2回、童謡の会が開かれた。主催はNPO日本国際童謡館の館長で、日本を代表する童謡歌手の大庭照子さん。日本から来た有志ボランティア13人も加わり、クアキニ老人ホームと、シェラトンプリンセスカイウラニで開催された。大庭さんは1996年から、日系人が入所するクアキニホームの慰問をずっと続けている。今回は民謡の福島竹峰さんと、日本童謡館ハワイ支部の髙田真里理事長とともに童謡や民謡を披露。
新春歌いぞめと称して『一月一日』、「と〜しのは〜じめの、ためし〜とて〜♪」のお正月の歌の合唱から始まった。『富士山』、『ゆりかごのうた』など、懐かしいメロディーも。 竹峰流宗家二代目の竹峰さんは三味線を手に、熊本民謡の『おてもやん』、静岡の『ちゃっきり節』などお国言葉の方言が楽しい民謡を艶のある声で熱唱。九州の『炭坑節』を歌い始めると、日本から同行してきた仲間が踊り始めて賑やかに。
車椅子や移動式のベッドに寝ながら鑑賞していたホームの皆さんは、始め表情が硬く、大庭さんらがマイクを向けても歌おうとしなかったが、何曲も歌ううちに自然と手を叩いたり、笑顔がこぼれたり、口ずさんだり。
「長い間しまいこんでいた心の引き出しが開くと、皆さん明るくなります。歌の力はすごいんですよ」と大庭さん。本当に皆さん、驚くほど表情が豊かになっていく。竹峰さんが握手をしながら会場を回ると、きれいな着物だねえと袖を触ったり、おいでおいでと手招きをして筑豊さんの手を撫でたりしている。
今年は童謡100周年、 次世代に伝えたい大切な文化
「今年は童謡が生まれて100周年の記念すべき年です。わらべ歌は古くからありましたが、1918年に児童雑誌『赤い鳥』が創刊され、子ども達の美しい空想や純な情緒を優しく育むような歌や曲を作ろうということで、“童謡”という言葉が生まれたのです。西条八十が作詞した『かなりや』が童謡第1号ですね」
大庭さんは、ジョージ有吉元知事の母上が愛唱していたという『荒城の月』も歌った。遠く日本を離れ、ハワイで見上げる月を、故郷の家族も同じように見上げているのだろうか。クアキニホームの高齢者の皆さんの人生はいくばくだったのか、静かな横顔に平安あれと願わずにはいられない。
長年の童謡慰問をサポートしているのは、クアキニホームのボランティア、ジョハンナさん。笑顔がとってもチャーミングだ。 「ホームの日本語通訳として20年、ボランティアとして24年働いてきました。大庭さんの童謡慰問は始まりからずっとサポートしています。私? 今、87歳ですよ」
ボランティアには91歳のご婦人もいるというから頼もしい! 大庭さんも今年80歳だ。 「これまで100年歌い継がれてきた素晴らしい童謡を再評価し、この先末長く歌い継いでいくことは、今を生きる私たちの使命であり、喜びです。ぜひ共に、21世紀の童謡文化を築いていきましょう」 (取材・文 奥山夏実)
(日刊サン 2018.01.24)