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 日本へ一時帰国するため、先日、JFK国際空港から羽田空港行きの便に搭乗した。約14時間を予定していたフライト時間が、気流の関係で30分早く羽田に着陸できそうだとアナウンス。羽田空港から国内線に乗り継いで最終地点、高松空港まで戻る私には、ラッキーな知らせだった。というのも、乗り継ぎ時間の関係で、一つ早い便で高松に帰れるかもしれないという微かな望みが出てきたからだ。

 予定していた最終便より一つ早い便に乗ることができれば、夜9時には家に到着できる。そして何より、3時間も羽田空港で待たなくてよくなる。風邪をひいている上に、長時間のフライト。疲れの溜まっている私にとっては、できれば一刻も早く自宅に戻りたい気分だった。

 間に合うかどうかギリギリの時間だったので、羽田空港に到着後、急いでスーツケースを受け取りドキドキしながら、夫と国内線のチェックインカウンターへ。

 係員の女性に尋ねると、なんとか、早い便に間に合いそうだと言う。ホッとしたのもつかの間、次の瞬間、 「あっ! 2席だけ残席があったのですが、たった今、1席埋まってしまいました…。お1人様だけ早い便にご搭乗されますか?それとも、お2人であらかじめご予約の最終便にご搭乗されますか?」

 えーーー!そんなぁ…。どっと疲れが吹き出した。でも、諦めずに空席待ちを聞いてみることに。「空席待ちをして乗れる確率は1%でもありますか?」と私。「0%ではありません」と係員の女性。

 1%でも、チャンスがあればそこに賭ける!  NYに住んでいると、私のまわりのニューヨーカーたちは、選択肢があるとき、そこにほんの少しでもチャンスがあるとしたならば、そのチャンスに賭ける。自分の身を置く環境とはすごいものだ。いつもなら守りに入っていたはずの私が瞬時に、「守り」ではなく「攻め」を選択した(笑)。自分でも驚いた。思いがけず、無意識のなかでニューヨーカーマインドのスイッチが入った出来事だった。環境が生活に及ぼす影響って大きい。

 その後、搭乗時刻が刻々と近づく中、私は空席待ちカウンターへと向かった。係員の方に空席待ちのチケットを見せると、「申し訳在りません。この便は満席です。」との回答が。えぇぇ…!?やっぱり乗れないのか。がっくり。まぁ、仕方ないか。いや、でももう一度聞いてみよう!粘り強く諦めないのも、ニューヨーカーたちから学んだこと。もう一度、カウンターへ行き、問い合わせるとなんと!その場で1席だけ空席が飛び込んできた!!わ〜、諦めずに聞いてよかった。  最後までハラハラどきどきの帰路だったけれど、自分の新たな一面にも出逢えた面白い体験だった。

 

(日刊サン  2017/12/13)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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