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変わるものと、変わらないものと…

 高松での仕事を終え、マンハッタン入りして2週間とちょっとが過ぎました。ニューヨークは、とにかく変化の街。前回仕事で来てからは、まだ3カ月もたっていないのに、もう、街の風景の何かが大きく変わっている…24時間365日、常に目まぐるしく人や物が入れ替わり、毎日、街全体が新しく生まれ変わっているように感じます。  

 

 そんな中、先日こんな出来事がありました。NYに帰省した翌日の事。夫アダムの友人、アルバが、チェルシー地区にある、アダムの実家のロフトに遊びにやって来ました。有名な哲学者の彼は、お土産にと、メトロポリタン美術館から最新作の自分の本を自分で買って持って来てくれました。  

 アダムとアルバ。二人は小学生からの親友で、共にマンハッタン育ちのニューヨーカー。スカイプやメールなどでよく連絡は取り合ってはいるものの、アルバは、バークレー大学で哲学の教授をしているため、カリフォルニアを拠点に世界中を飛び回っており、私たちもNYを離れハワイと日本にいる時間も増えたことで、ここ数年は会えていませんでした。  

 そんな、アルバがロフトを訪れたのは、なんと、40年近く振りだとか!そして、家に入るなりこの一言… 「わぁ!!! この匂い!子どもの時に遊びに来ていたときと、全く変わってない!」  

 そう、私にも同じような経験があります。昔、おばあちゃんの家で嗅いだ懐かしいにおいや、街で、昔の友人と同じ香水のにおいの人とすれ違った時など、一瞬にして時間がタイムスリップして、すべての思い出までが蘇ってくるといった体験。  

 幼少の頃の記憶に触れたアルバと夫のアダム。夜中12時過ぎにも関わらず、日本から持参した、アダムのアート作品の開梱をはじめました。いい歳をした大人二人が、夢中で箱を開けながらワクワクしているその姿は、まるで、クリスマスプレゼントを待ちきれずに開けてしまった少年たちみたいで、思わず笑ってしまいました。  

 アーティストと哲学者。二人は今、幼少の頃からの夢を叶えて、それぞれがやりたい道を突き進んでいる。  

 変わっていく街の中で、二人の夢だけはずっと変わらずに…。 

 

つづく

 (日刊サン  2016/4/25)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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