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街にやってくる人、去っていく人

 仕事でNYに滞在して、はや1ヶ月が過ぎました。24時間鳴り止まないパトカーのサイレンや工事の音。人々の話す大きな声…。街の騒音も、耳障りで無くなって来た今日この頃。マンハッタンで生まれ育ったアダムに、そのことを何気に伝えたら、「チズ!そんなことに慣れちゃだめだ!!」と真剣な顔で返答が… 「僕は、はやく、ハワイに戻りたい〜!」がアダムの目下の口癖です。(笑)  

 私が今滞在しているアダムの実家、チェルシー地区は、エンパイヤステイトビルから徒歩2分の場所にあります。今でこそ、高級エリア。高級ホテルに高級レストラン、バーが立ち並び、ペット用高級ホテル&デイケアまで充実しています。昼夜、働く人と観光客で溢れ、ごった返しています。しかし、今から約40年ほど前、アダムが子どもの頃は夕方になると人は誰も通っておらず、昼間でもひったくりや車上荒らしをしょっちゅう目撃していた、危険で誰も住みたいと思わなかったエリアだったそうです。  

 なぜ、そんな場所にアダムのファミリーは引っ越して来たのか?その理由は、安くて超広いロフトが手に入ったこと。お父さんもまたアーティストで、住まいとアトリエを兼用に広いロフトスペースを探していて、マンハッタンのダウンタウンからチェルシー地区に移って来たようです。  

 かつて、SOHO地区もそうだったように、アーティストが行く所には最新のおしゃれなカフェやレストランができて新しい文化が誕生する。そしてその場所に人が集まる。すると当然、人気になり家賃が上がる。で、アーティストは住めなくなり、また新たな新境地を求めて住み慣れた街を去っていく…、その繰り返し。  

 

 NYCは昔から、世界中から人々が集まる人種のるつぼ。マンハッタンにいると、地元で生まれ育った生粋のニューヨーカーに出逢う確率はかなり低く、パーティーでも、”Where are you from, originally?”という会話がよく出てきます。大抵は、アメリカの他の都市や海外から来られていることが多いです。それがまた、NYCという街に新たな文化を生み、街がエキサイティングに変化を遂げていく、大きなエネルギーの源にもなっているのだと思います。  

 夢を求めてやってくる人、去っていく人…、様々な思いを胸に抱き、今日も世界中からNYCに人が集まってくる。どんな出逢いがあり、どんな新しいことが待っているのか?

 朝、目覚めた瞬間からワクワクが始まっている。

 

つづく

 (日刊サン  2016/5/9)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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