「妻と二人で赴任してきたのですが、つい先日初孫が生まれまして。妻は今、日本に帰っております」
ホノルルの日本総領事館に10月初め、伊藤康一総領事が新しく着任した。19日、日本語メディア関係者を招き、懇親会を開催。「どしどし出かけていろんな人と出会い、交流したい」とフランクに語った。
在ハワイの日本国総領事に、伊藤康一氏が新しく着任した。
「ホノルルに来る前は、北京の日本国大使館と、広州の日本国総領事館にあわせて5年あまり勤務していました。1984年に外務省に入省してから中国が一番どっぷり、長く仕事をしてきたことになります」
ハワイへは昔、出張でとんぼ返りしただけなんだとか。
「ハワイ大学のイーストウエストセンターでの会議でした。出張経費はできるだけ安く抑えないといけないと言われ、エコノミーの飛行機と安いホテルがパックの団体旅行に混ざって行きました。飛行機の中はほとんど新婚旅行のカップルでね、客室乗務員に『何名様ですか?』なんて聞かれちゃって。男一人だからツアコンに間違われてしまったんですね」
柔和な笑顔が親しみやすい総領事だ。
来年は日系移民150周年、多くの記念行事をサポート
「だから本格的なハワイデビューはこれからです。北京からホノルルに来る間、2週間だけ東京に滞在できたので、ハワイの勉強を始めましたが、実際にハワイで暮らし、ハワイで働きながら、自分の実感としてハワイ州を理解していこうと思います」
着任早々、パンチボウル・アメリカ合衆国太平洋記念墓地や、マキキ日系人墓地などを訪問し、献花して来られたという。
「日系移民で、元年者と言われる方々の慰霊碑や、海軍の兵士の慰霊碑などを参拝しました。明治にさかのぼる、日本とハワイの長い歴史があるんですね。日本からハワイへの移民の歴史、大戦の不幸な歴史、戦後の日系人のハワイ社会への貢献……。華やかな観光地としてのハワイだけでなく、ハワイの明暗のすべてを、私を含め、多くの日本人に知ってほしいと思いました。マキキの墓地には日系人のお名前がローマ字で刻まれているんですね。名前を読むうちに胸に迫るものがありました」
来年は明治元年(1868年)、日本人最初の集団移民がハワイに渡ってから150年の、節目の年に当たる。総領事館としても様々な行事をサポートし、忙しい一年となる。
「元年者イヤーとして、いくつもの日系団体がセレブレート行事を企画されています。領事館としては150周年委員会のコンテンツをまとめ、11月中旬以降発足する予定です」
ハワイの中だけでなく、日本国内でも移民の歴史に関心を持ってほしいと話す。
「日本人は世界各国に移民していますが、移民の歴史の第一歩はハワイ、ハワイへの移民が一番初めで歴史が長いんです。だから例えばNHKなどが、ハワイで移民の歴史のドキュメンタリーを作って、日本で放送してくれたらいいなあと。来年、年明けに日本に行って、日本のメディアがもっと関心を持ってくださるよう、お話ししてこようかと考えています」
日本とアメリカの友好関係が、最も顕著に実現しているのがハワイ
外務省にとって、ハワイというのはどんな位置付けの外交エリアなのだろうか。
「日米関係が最も良い形で現れているのがハワイです。アメリカは日本にとって一番大切なパートナーですから、その関係をいかに維持強化するか、ハワイは大いに貢献してくれています。駐米大使だった加藤良三さんが、「外交は庭の手入れに似ている」と言われた。水をやったり雑草を抜いたり、貿易、経済、安全保障すべて、人が手をかけて行うものです。総領事館は外交関係を直接扱うわけではありませんが、日系アメリカ人をはじめ、ハワイの方々と大いに交流することで、さらに友好的な関係を築いていきたいです。私もさまざまな場にどんどん出かけて、学び、語らい、楽しみたいです」
すでに友好のシンボル、アロハシャツを上手に着こなしている伊藤総領事。
「アロハシャツは本当に公用シャツなのかなあと半信半疑だったんですが、確かに皆さん、正式な場でもアロハなんですね。若々しい気分になれて良いものです。ハワイは海がきれいなので、スタンドアップパドルにも挑戦してみたいと思っています」
外務省の“たびレジ”に登録すると、ハワイでの安全情報が送られてくる
総領事館の、邦人保護という役割については。
「必要に応じてハワイの日本語新聞などのメディアに広報を出します。また外務省の“たびレジ”というサイトがあるので、ぜひ利用してください」
“たびレジ”にハワイの旅行日程を登録すると、ハワイ在外公館の連絡先や、ハワイの安全情報などが見られる。登録したメールアドレスには、在外公館が出す緊急一斉通報や、最新海外安全情報メールが送られてくる。ハワイで緊急事態が発生した時には、登録した電話番号を基に、緊急時の連絡なども来る。登録はもちろん無料だ。
「“たびレジ”は最近、中小企業向け海外安全対策マニュアルに、長年国際的な治安に貢献してきたゴルゴ13とコラボして、話題にもなっています」
開かれた総領事館でありたいとも語る。
「私が中国に赴任したのが、日本と中国の国交正常化45周年の年で、ハワイに赴任したのが移民150周年。そういう節目の年から相手国で仕事ができるめぐりあわせに感謝します」
外務省“たびレジ
www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
(日刊サン 2018. 10. 28 / 取材・文 奥山夏実)