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今年8月よりホノルル市では建築許可申請の際に新たにErosion and Sediment Control Planというものが必要になりました。新たな制度の意義や、今後建築を改修・増築・新築する際にどのように影響を及ぼすのか簡単にご説明致します。

 

土砂が流れないように計画・監視が必要  

本制度は工事中及び工事後に敷地内の土が外に(下水に)流れていかないように計画し、有資格者が工事中は計画通りに遂行されているか30日に1回観察及び記録をしなければならなくなりました。  

基礎を打つ際に敷地の土を掘り起こしますが、その土をそのまま放置していると雨風で舞ってしまい、道路や近隣に流れていってしまいます。そのようなことを防ぐために、きちんと土は敷地内にとどまるようにフェンスを立てたり、カバーをしたり、植栽を植えて安定させたりする必要があります。

 

土壌に少しでも触れるような工事はすべて必要  

室内のみの改築以外はすべて影響すると考えて問題ないと思います。フェンスを立てるだけでも、柱を一本追加するだけでも本制度は適用されます。低いフェンスの設置や小規模なランドスケープを施す場合等、建築許可が必要ないようなほんの小さな工事でも土砂管理の計画をしなければなりません。  

基本的に建築士がすべて行う業務となりますが、1 acreを超えるような大規模な土壌改善となると土木技師が行う必要がでてきます。かなり手間のかかる作業となりますので、今後の設計料は少し値段が上がることが予想されます。

 

環境を考えると非常に大事  

ハワイの建築はただでさえとても高いのに、さらにお金も手間もかかる制度が追加されました。ただ、これは環境問題を考えるととても有意義な制度です。ハワイに大雨が降ると大量の土砂が海に流れてしまい、空から見ると島の周り全体が茶色く濁るそうです。この土砂には車のオイルや薬品等、様々な汚染物質が含まれており、それらが海に流れ出てしまうことによる環境汚染は計り知れません。  

土砂を下水や海に流さないことによって海をキレイなままで保てことは長期的な視線で見るととても有意義な制度だと思います。

 

(日刊サン 2017. 10. 11)

 

 

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鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

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明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。