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手前味噌で恐縮ですが、先日提出した学術論文が国際学会の審査を通過したため、今年の開催地であるイタリアに赴き発表をする機会を与えていただきました。そこで今回は、学術ジャーナルに掲載される内容の触りを少し紹介させていただきたいと思います。

 

屋根のポテンシャル  

屋根の役割というのは、その下にある建物内部を雨風等から守り、太陽光・熱を遮るために存在しています。この屋根の上に何かを載せて付加価値をつければ、建物の所有者はもちろんのこと、都市全体として多大なるメリットを享受することができるのではないでしょうか。都市部における屋根が占める面積というのは、都市全体の面積の1/3程度もあります。そのすべてを緑化したときの影響力は計り知れないものがあります。

 

屋上緑化のメリット  

大都市の問題点は主にコンクリートの多さに起因しています。特にハワイにおいてはその影響を肌で感じることができます。例えば、雨水は通常土の中に染み込んでいき、時間をかけて河川や地下水、また海へと流れていきます。ただ、都市部においてはコンクリートが地面のほとんどを覆っているため、土に染み込むことなく下水へと流れていきます。そのため、強い雨が降るとすぐにFlash Warning(洪水警報)が出るのは皆さんご存知かと思います。また、コンクリートは熱帯夜を引き起こす「ヒートアイランド現象」の主な原因にもなっています。都市部の1/3もの面積を占める屋根をすべて緑化することで、劇的に都市部特有の問題を軽減することが可能になります。他にも屋外の防音・断熱の役割を果たしたり、空気の浄化を手伝ったりと、屋上緑化の利点は数多く挙げることができます。

 

都市農業のメリット  

屋上でせっかく植物を育てるのであれば、食べられるモノ(農作物)をつくった方が有意義ではないかというのが私の主な論点です。農作物であっても上記にあげた利点はすべて享受できます。単なる芝を育てるわけではないので、その分手間もかかりますが、逆に言うと、その分雇用の機会を増やすことにもつながりますし、もちろん利益を生むことも可能です。また、短時間の農作業をすることによって、現代人のストレスは飛躍的に軽減することも知られており、さらには、食料自給率を上げます。ハワイや日本のように食べ物を輸入に頼っている場合、震災時や有事の際に致命的な状況になるだけでなく、送料や関税により値段が高い上に、運ぶときに必要なエネルギーを考えるととてもエコだとは言い難いでしょう。都市部で農作物を作ることが最も効率的でかつエコであることは明らかなのですが、唯一の問題は地価の高さです。そこで、今まで利用されていなかった屋上を利用すれば、その点は難なくクリアできると私は考えます。緑あふれる自給自足の大都市…そんな街にいつかなればいいなと夢見ています。

 

(日刊サン 2015. 11. 18)

 

 

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鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

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明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。