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一軒家を建てる際、もしくは改築・増築する際には様々な法規が関わってきます。高さ制限からセットバック、建蔽率などあげていけばキリがないほどのルールがありますが、今回はその中から、一軒家には一家族しか住むことを認められていないという話をご紹介したいと思います。

 

一軒家に一家族  

自分が所有する土地に自分が家を建てるのだから好きにさせてほしい!というのが大半の方々の考えで、日本では自由度が高いのですが、米国は少し事情が異なります。  

一軒家には、基本的に一家族のみが住むことができます。二家族住めるようなプランニングは厳しくチェックされますし、市から変更を要請されてしまいます。二家族以上住むようであれば、その分火災などのリスクや損害が大きくなるなるため、規制が一層厳しくなり、タウンハウスやアパート、コンドミニアムとして申請する必要があります。ほとんどの住宅街ではこれらの複合住宅の申請は許されていないため、不可能であるケースが多いのです。ただ、例外としてハワイにはOhana(家族)という制度があります。二世帯住宅を目的としたもので、ある程度敷地が広い住宅街で認められてます。これは個々の敷地によって定まっているので、自分が所有している、もしくは買おうとしている土地が認められているかは、建築士に聞いてみましょう。もしOhanaが認められていれば一つの土地に二軒の住宅を建てることも可能となります。

 

一家に一つしか置けないモノ  

住宅は一軒でも、内部を無断で分割してこっそりと二家族住んだりできないように、他にも決まりがあります。まず、すべての部屋は繋がっていなければなりません。それも、寝室やトイレ、倉庫などを通って他の部屋に行くことは禁じられており、リビングもしくは廊下を通じて家の中にあるすべての部屋に行き来できる必要があります。その他にも、キッチンとランドリーは一家に一つずつしか配置することができません。厳密に言うと、ランドリーという部屋が一つしか配置できないというだけで、同室に二個ずつ洗濯機と乾燥機を設置することは問題ありません。また、キッチンは一つしか配置できませんが、バー(Wet Bar)という形態であれば配置することができます。キッチンには、冷蔵庫・コンロ・シンクが必ず一つずつはありますが、「バー」であるにはこの三つのうち二つまで(通常冷蔵庫とシンク)しか設置することはできません。また、カウンターやキャビネットの大きさに制限があるので注意が必要です。  

これらの制限は、二家族以上住むことを目的としていない場合でも、引っかかるケースが数多くあります。一軒家の新築・改築・増築ご計画の方は、根を詰めて考え出す前に、自分達が計画しようとしている住宅は法規的にも実現可能なのか、一度建築士にご相談されてはいかがでしょうか。

 

(日刊サン 2015. 12. 2)

 

 

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鵜飼 高生 Takao Ugai 建築士・AIA・LEED AP・博士(建築)・家庭塾長 Focus Labo LLC 代表取締役

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明治大学建築学科卒業後、ハワイ大学マノア校で建築の博士号を取得。日米両国での建築設計実務経験がある、経験豊富なハワイ州登録建築士。