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在ホノルル日本国総領事館協賛 主婦ソサエティー・オブ・ハワイ総会開催

Bynikkansan

9月 18, 2017

総領事公邸前で撮影された参加者全員の集合写真

 

 

在ホノルル日本国総領事館総領事公邸で、6日、主婦ソサエティーオブハワイの総会が開催された。総会は年に1度開かれているが、今回は三澤康総領事が今月末にドイツへ転任するため、総領事夫妻のお別れ会を兼ねた集まりとなった。総会では、来年2018年にハワイ日系人移民史150年を迎えることを受け、明治元年(1868年)にハワイへ移住した「元年者」と呼ばれる日本人移住者たちをテーマとした講演が行われた。約60人の参加者たちは、会場を彩る重陽の節句の菊の花や次の間に展示された約150年前の洋食器に囲まれながら、互いに交流を深めていた。

始めに、総領事夫人三澤葉子さんが挨拶し、その中で元年者の中にいた日本人女性について語った。

総領事夫人 三澤葉子さん

 

サトウキビ畑での過酷な労働に耐えられず大勢の移住者がハワイを離れていった中、最終的にハワイに残った50人の日本人の中で、女性はたった1人だった。三澤さんは和裁を趣味としているが、着物を縫う時、150年の時をさかのぼってその女性に会っているような気持ちになり、彼女もここハワイで日本の家族や友人を思い出しながら着物を縫っていたのだろうかと想いを馳せることがあるという。三澤さんは、このエピソードに因み、明治生まれの祖母が描いた絵更紗の着物を身に付けていた。

次に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校アジアン・アメリカン・スタディーズ・センター創始者でハワイ大学教授のデニス・オガワ博士が、ハワイの日系移民の歴史をテーマに講演を行った。

1970年代にハワイ大学に着任して以来、オガワさんはハワイの日系移民史を含めたハワイ史の研究と講義を続けている。経済史、政治史など様々な観点から移民史を研究する中で、特にオガワさんの興味を引くのは人々の日常生活や個人の体験談。当時の日記や手紙などを読むなどし、大勢の人々の個人史を紡ぎ合わせると、移民史の全体像が鮮明に浮かび上がってくるという。

研究の一環として、オガワさんが明治時代の日本の皇族の日記を読んでいたところ、日記の著者が国際交流の場でハワイアンの人々に会ったというエピソードを見つけた。著者は皇族として多数の外国人に会ってきたが、お辞儀をする角度が1番深いのがハワイアンだった。その仕草は地面に接吻をしているように見え、日本人が持つスピリチュアリズムに似たものを感じたと記されていた。

ハワイ大学教授 デニス・オガワ博士

 

オガワさんは、ハワイアンと日本の人々の間にこういった心理的共通点があったことが日系移民がハワイに根付いた理由の1つと考えている。1868年にサトウキビ畑の労働者グループとして始まったハワイの日系移民史は、1920年代からコミュニティーとしての歴史を歩み始める。1930年代は、サトウキビ畑で働く日系移民は男性25人に対し女性1人という割合だったため、日本女性が見合い写真を見ただけで結婚を決めハワイへ移住するという「ピクチャーブライド」の全盛期だった。第二次世界大戦中、日系人たちは収容所での生活を強いられたものの、限られた場所での集団生活は結果的に互いの結束力を強めることとなった。そして現在に至るまで、移民コミュニティーとして、ハワイでの主導的立場を維持し続けている。

講演の後、ジョージ・アリヨシ前ハワイ州知事が、三澤康総領事夫妻のドイツでの活躍を祈念して乾杯の音頭を取り、昼食に入った。

元ハワイ州知事 ジョージ・アリヨシさん

 

昼食では「夏の家」特製弁当と総領事館のシェフが創作した桃のムースが供された。

昼食後、展示会に出品されたアンティーク洋食器のオーナーでアーティストの武田健成さんが「海を渡った西洋スタイル・ニッポン・ポーセリン」と題して講演を行なった。武田さんはある時、ニューヨークで美しいアンティークの洋皿を見つけたが、形も絵柄も洋風であるにもかかわらず、裏印にNIPPONという文字があったことに驚いたという。それから日本製アンティーク洋食器の魅力の虜となった。

アーティスト 武田健成さん

 

現在は、展示会を開けるほどに高品質で珍しいアンティーク洋食器を多数所有している。武田さんは、これらの洋食器は、飾っておくばかりでなく使ってこそ食器としての価値と魅力を知ることができると考えており、普段の食事にも使用しているという。

次の間にはアンティーク食器が展示された

 

武田さんの公演後、主婦ソサエティー総会最後のプログラムとして、三澤康総領事が「元年者のお話」と題して講演を行なった。元年者150人のリーダーだった宮城県石巻市出身の牧野富三郎、元年者の中で最年少の13歳だった石村市五郎、岡山県の侍から日系移民となり、マウイ島で102歳の生涯を終えた石井千太郎、東京の京橋出身でハワイアンの女性と結婚した佐藤徳次郎、1886年にハワイ初の総領事となった安東太郎など、彼らが置かれていた個々の背景を紹介しながら、初期の日系移民史を語った。

「元年者」について語る三澤康総領事

 

その後、武田健成さんが三澤康総領事夫妻にコアウッドのペンと白檀の扇を贈呈。また、武田さんのコレクションの中から提供されたアンティーク食器が当たるドアプライズが行われ、会場を盛り上げた。最後に主婦ソサエティーのメンバーと総領事夫妻がフラを踊り、和気あいあいとした雰囲気の中、主婦ソサエティーオブハワイの総会は幕を閉じた。        


主婦ソサエティーオブハワイ会長 有川啓子さん、デービッド・イゲ ハワイ州知事夫人 ドーン・イゲさん


フラを踊る主婦ソサエティーオブハワイのメンバーと総領事夫妻

 

(取材・文 佐藤友紀)