講演に聴き入る参加者たち
ホノルル市のマクア・アリイ・シニアセンターで、8月8日、恒例の若葉ネットワーク勉強会が開催された。この勉強会は「Fall Prevention Program」をテーマとし、シニアの人々に自宅で安全を確保するための環境整備や危険要因の認識などを促すことが目的。自宅での転倒事故を未然に防ぐための具体的な対策について、シニアサポートの非営利団体「プロジェクト・ダーナ」代表、マイク・ヒラノ氏が講演をした。
ハワイ州では昨年1年間に、自宅で転倒して怪我を負ったお年寄り8000人以上が救急車で運ばれた。また、州在住のお年寄りが死亡する原因の51%は、自宅での転倒となっている。転倒事故に遭うお年寄りの61%は1人暮らしの女性で、午前9時から午後1時までの時間帯に多く発生している。この事故で多く見られる「股関節の骨折」をした人が快方へ向かう確率はわずか25%で、60歳以上の人については、24%が事故から1年以内に亡くなり、40%が介護施設へ入所し、50%は杖か歩行器を必要とするようになる。
平均で7割の時間を自宅で過ごすお年寄りの転倒事故。これを未然に防ぐため、ヒラノ氏から以下のような対策が挙げられた。
❶ 飲んでいる薬を確認する
処方されている薬、市販の常備薬など、飲むと眠気を催したり、ぼうっとするものがあるかどうかを確かめる。自分でわからない場合は、医師や薬剤師に相談する。
❷ 視力をチェックする
加齢による視力の低下、水晶体が濁る白内障、視野障害が起こる緑内障なども転倒事故の一因となるため、1年に1度は眼科へ行き、自分の目の状態を確認する。
❸ 運動をする
バランス感覚を養い、筋力の低下を防ぐため、1日30分、太極拳やウォーキング、水泳などの運動をする。
❹ 家の中の整理整頓
家の中を点検し、足が引っかかるようなものがあれば、片付けたり、安全な場所へ移動する。通路にある電気コードはとても危険なので、脇によける。階段の縁には反射板を付け、床に敷くラグは滑りやすいので、なるべく使わないか、使う場合は床に固定する。キッチンでは、床にこぼれた油に足を取られて転倒するケースが多いため、気がついたらすぐふき取る。
❺ ナイトライトを使用する
ベッド脇や廊下にナイトライトを付け、夜中にトイレに行く際に足元が見えるようにする。懐中電灯を使ってもよい。ベッドから起き上がって立つ時は、枕やブランケットなど、寝ている間にベッド脇へ落ちたものがないか確かめる。また、日中でも暗い場所があれば、照明を取り付け、明るく見えやすいようにする。
❻ お風呂場にアシステッドデバイスを設ける
転倒事故が起こる最も多い場所と原因は、お風呂場で水や石けんなどに足を滑らせるケース。手すりや床の滑り止め、シャワー用の椅子など、転倒防止のためのアシステッドデバイスを設ける。
❼ 移動する際のスペースと通路の確保
例えば、前に背の低いテーブルが置いてあるソファから立って移動する時、テーブルとソファの間隔が狭いと転びやすくなるため、テーブルを小さいものにするか、ソファの前からずらした所に置き、安全に立ち上がって移動するためのスペースを作る。
❽ 火事になった際の逃げ道を考えておく
火災報知器と煙感知器の設置に合わせ、動揺して転倒したり、逃げ遅れることを防ぐため、非常口への経路を確認し、物を片付け、逃げ道のスペースを空けておく。救助が来るまでの待機場所も確認し、外の人に自分の居場所を知らせるための目立つ色のシャツや布などを、ラナイや窓から出せるようにしておく。
❾ パーソナル・アラーム・システム(メディカルコール)の設置
緊急の時に、ボタンを押すだけで救急センターに連絡できるアラームシステムを設置する。
これらの対策を前提とし、プロジェクト・ダーナでは「自宅安全プログラム」を実施している。これは、ヒラノ氏のような専門家に家の中を見てもらい、危険な箇所などを確認した上で、安全確保のための具体的な方策を取るというもの。自宅の査定は無料。
ご希望の方は「プロジェクト・ダーナ」 電話:945-3736 Eメール:[email protected] までご連絡を。
また「若葉ネットワーク」ではシニアのQOL向上のための講演やセミナーを定期的に開催している。ご興味のある方は、352-2631までお電話を。
プロジェクト・ダーナ代表 マイク・ヒラノ氏
(取材・文 佐藤友紀)