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家族で食事中、オーストラリアの話になった。オーストラリアのケアンズへ家族旅行に出掛けたのは、8年くらい前のこと。この旅は、当時まだ85歳だった祖母が急に、「オーストラリアに行ってみようか」と言った一言から始まった。  

祖母がなぜ、オーストラリアと口にしたのかは未だに不明だが、たまたま翌日にオーストラリアケアンズの旅を見つけた。ちょうど、これまた偶然に家族みんなの仕事の都合もつく日程で、もう、そうなると行かない理由はない! と盛り上がり、決行となった。  

 

申し込みから旅までの数カ月。今までケアンズとは何のご縁もなかったのに、なぜかケアンズ出身の人と知り合ったり、たまたまつけたテレビにケアンズの旅が映し出されたり、とにかく面白い偶然が重なった。人生とは、そんなもんだ。今まで関心のなかったことでも、関心を寄せた瞬間からその情報が目に入ったり耳に入ったりしていく。まるで、今まで興味のなかったメーカーの車なのに、意識を向けたら、次々とそのメーカーの車ばかりが目に飛び込んでくる、といった経験のある方もいるのではないだろうか。  

ケアンズで最も楽しみにしていたのは、6000年もの歳月をかけて創りあげられた珊瑚の島、グリーン島へいくことだった。ケアンズから高速艇に乗ってたった45分程で到着。一生のうち一度は、自分の目で世界最大の珊瑚礁地帯、グレート・バリア・リーフを見てみたいと長年思っていた。まさに、その夢が叶う!はず、だったのだが、、、残念なことにあいにくのお天気。青空に燦々と照りつける太陽、透き通る海水を想像していたが、現実は真逆。空は分厚い灰色の雲に覆われ、今にも雨が降り出しそう。  

気を取り直して、空の上空から珊瑚礁地帯を見ることにした。しかし、真下に夢にまでみたグレート・バリア・リーフが広がっているはずなのに、全くみることができなかった。  

いつもなら、息をのむ程の珊瑚礁が眼下に広がっているだろう海上を、残念がりながらも私たちの乗るヘリを操縦してくれていたのはブロンドヘアの女性パイロット。ハリウッド女優並みの美しさだった。後からわかったことだが、彼女は大好きなパイロットの仕事をしながら、現役でばりばり活躍している有名モデルだった。  

 

念願のグレート・バリア・リーフを見られなかったことはとても残念だったけれど、この女性パイロットのお陰で、同じ女性として憧れるかっこいい生き方を目の当たりにすることができた。オーストラリア、グリーン島の旅は私にとって、大きな刺激を貰った貴重な旅となった。今までの自分の生き方の視野を広げてくれるような思いがけない出逢いがあるのも、また、旅に出る醍醐味だ。

 

(日刊サン  2017/7/26)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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