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日焼けの仕組み、紫外線の種類、日焼け止めの働き「日焼け」を知って、よりよい紫外線対策を!

(楽園綺譚 ameblo.jp/rakuenkitan)

 

 

1年中温暖なハワイに住んでいると、皮膚や健康に害になる過度の日焼けには、特に気を付ける必要があります。日焼け止めや日傘などで対策をしている方は多いと思いますが、どうして日焼けが起こるのか、紫外線が肌に与える影響、日焼け止めの種類や働きなどをご存知でしょうか。日焼けについての具体的な知識があると、よりご自分に合った正しい対策ができるようになります。では早速、見ていきましょう。

 

日焼けの仕組みと紫外線

「日焼け」とは?

人間の体の防御反応として、紫外線が肌に当たると、茶色の色素であるメラニンが分泌され、皮膚の表面に沈着し、肌色が濃くなります。沈着したメラニンは、紫外線が皮膚組織の内部へ入っていくのを防ぐ機能を持っています。メラニンの分泌量は人種や個人によって異なります。一般に、生まれつきメラニン色素が多く肌色が濃い人は、薄い人に比べて日焼けしにくいと言われています。

 

太陽光には種類がある

日焼けの原因となる太陽の光は、波長(ナノメートル)によって「赤外線」「可視光線」「紫外線」の3種類に分類されます。波長が短い光ほど皮膚への影響が大きくなります。3種類の太陽光の中で最も波長が短く強い光が、日焼けを起こす紫外線です。

(環境庁env.go.jp)

 

3種類の紫外線

紫外線はA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)の3種類に分類されます(「UV」は英語で紫外線を意味する「Ultra Violet」の頭文字)。紫外線が肌に当たると、皮膚のたんぱく質が変質し、弾力性を保つ繊維であり、コラーゲンを支えている「エラスチン」が破壊され、シワができたり、弾力性が失われたりします。そのため、日焼けは「光老化」といって、皮膚が老化する最も大きな原因と言われています。3種類の紫外線は、それぞれ皮膚へどのような影響を与えるのでしょうか。

(美白スキンケアナビ bihakuskincarenavi.com)

 

A波(UV-A)  

紫外線の中で一番波長の長い光ですが、皮膚の中間部である真皮まで浸透します。真皮は繊維質が網状になっている組織で、密度の高いコラーゲン繊維が網状に結合しています。コラーゲンの内部に弾性を持つ繊維、エラスチンが広がり、コラーゲンを支えています。A波はこの組織を破壊し、皮膚のしなやかさや弾力を奪ってしまう上、A波が破壊した組織は元へ戻らないと考えられています。  

A波は、メラニン色素が皮膚に沈着して黒くなる日焼け「サン・タン」を引き起こします。日焼けサロンで照射されているのは主にA波です。

 

B波(UV-B)  

B波は、皮膚が赤く炎症を起こす日焼け「サン・バーン」を引き起こします。A波よりも波長の短い光で、皮膚表面の細胞を破壊し、皮膚ガンや白内障の原因になると考えられています。  

紫外線は、当たった部分のDNA(※1)原子がDNA分子を不安定にします。分子が不安定になると、DNAのらせん状の構造が切断され、DNA配列が正しく行われなかったり、DNAの複製が止められたりと、ミスが起こることがあります。これによって、遺伝子(※2)が正しく機能しなかった場合、ガンを含めた「突然変異」を引き起こすと考えられています。

 

※1 DNA → 遺伝情報を記録している物質。

※2遺伝子 →DNAの中で、タンパク質の作り方を記録している場所。DNA全体の約1.5%を占める。

 

C波(UV-C)  

紫外線の中で最も波長が短い光で、B波よりも有害です。オゾン層と酸素分子に遮断されるため、地上にはほとんど届きませんが、近年、フロンガスによるオゾン層の破壊によってC波が地上に届く量が徐々に増えてきています。

 

雨や曇りの日も降り注ぐ紫外線

紫外線は、晴れている日だけでなく、曇りや雨の日でも雲を突き抜けて地上に届きます。晴れの日に比べ、薄曇りの時は80〜90%、曇りの時は約60%、雨の日は約30%の紫外線量が観測されます。さらに、雲から太陽が出ていてると雲が太陽光を散乱するため、雲のない晴れの日によりも紫外線量が多い場合もあるのです。また、ビーチでは紫外線を砂や海が反射するため、実際に太陽光から発せられる紫外線量から更に10〜25%多い紫外線を浴びることになります。アスファルトや草地でも紫外線が反射するので、日焼け止めは天気や場所に関わらず、毎日塗るのがベストでしょう。

 

「日焼け止め」を知って上手な紫外線対策を

日焼け止め製品の素材と仕組み

日焼け止めには、大まかに3つのタイプがあります。

1.紫外線を散乱するタイプ

紫外線散乱剤は、塗ったときに白くなるのがこのタイプで、白い色は食品添加物などにも使われる酸化チタンや酸化亜鉛など、鉱物由来の成分です。紫外線を散乱・反射させ、肌表面に当たらないようにします。吸収させるタイプに比べて肌への負担が軽いため、敏感肌の人や、毎日の使用に向いています。

 

2.紫外線を吸収するタイプ

このタイプに使われている紫外線吸収剤は、「メトキシケイヒ酸オクチル」「アボベンゾン」「ホモサラート」などの化学合成成分です。これらの成分は、吸収した紫外線を熱や赤外線など別のエネルギーに変化し、放出する性質を持っています。一般的なアメリカの日焼け止め製品はこのタイプです。散乱するタイプよりもさらりとしたテクスチャーです。

 

3.散乱と吸収の両方で日焼けを防ぐタイプ

日本の日焼け止め製品では、このタイプが一般的です。紫外線を吸収するタイプのものは、化学変化を起こし続けて日焼けを防止するため、時間が経つに比例して効果が弱まっていきます。散乱するタイプも汗などで落ちていくので、2、3時間ごとに塗り直すのが理想です。日焼け止めだけでは十分でないと感じる時は、サングラスや日傘、アームカバーなどを併用するとよいでしょう。しっかりとした紫外線対策は、日焼けを防ぐだけでなく、日光を長時間浴びることで起こる体全体の疲労を防ぐこともできます。

 

SPF、PA、Broad Spectrum とは?

日焼け止めクリーム、ローションのパッケージに書かれている「SPF」と「PA」は、紫外線を遮断する効果の度合いを示す数値です。  

「SPF」はSun Protection Factorの略で、黒い日焼けの原因となるB派の遮断率を示しています。日焼け止めのパッケージに「SPF 50」と書かれていた場合、日焼け止めを塗らないときに比べて、皮膚への紫外線の吸収率が1/50になります。「PA」は Protection of UV-A の略で、赤い日焼けの原因となるA波の遮断率を示しています。  

日本の日焼け止め製品の場合、PAの後に「+」が付いていることが多いですが、これには「+」から「++++」までの4段階があり、+が多いほどA波遮断率が高いということを示しています。アメリカの一般的な日焼け止め製品は、「SPF」のみで「PA」の効果の度合いが書かれていません。  

一方で「Broad Spectrum」という記載をよく見かけますが、これは「広い波長の紫外線を遮断する」という意味で、この記載のある日焼け止め製品は、A波、B波の両方を遮断します。SPF値が低いものほど肌への負担が軽くなるので、毎日の使用にはSPF30以下の日焼け止めががおすすめです。

 

日焼けしてしまったあとのケア

冷やして水分を補給する

急に日焼けをした場合、3~6時間で皮膚が赤くなり、火照ったような痛みが出てきます。肌が炎症を起こす日焼けは軽度の火傷と同じ症状。まずは冷たいシャワーやタオルなどで日焼けした部分を冷やしましょう。火照りが少し落ち着いたら、奪われた水分を補給するため、化粧水をたっぷりとつけます。化粧水を冷蔵庫で冷やしたり、コットンなどに化粧水を含ませ、肌にのせて水分を吸収させ、その上に保冷剤を置いて冷やすという方法もあります。体の中からも水分を補給するため、水を多めに飲みましょう。

(Pascal Montsma@freepik.com)

 

肌の回復を促す栄養素を摂る

ビタミンC  

ビタミンCは、メラニンの生成を抑える働きがあります。レモンやオレンジなど、柑橘系の果物や緑黄色野菜を積極的に摂りましょう。また、寝る前にビタミンCのサプリメントを飲むと、寝ている間に代謝を促すDHEAというホルモンが分泌され、皮膚細胞の入れ替わりを促します。


(food.foto.ne.jp)

 

ビタミンE  

ビタミンEはメラニンの沈着を抑える働きがあり、シーフードやナッツ類、卵黄に多く含まれます。肌から直接吸収される性質があるので、食べ物やサプリメントに加え、ビタミンEが配合された化粧水などを使うとよりよいでしょう。

(無印良品ネットストアmuji.net)

 

βカロチン  

日焼けをすると、皮膚に活性酸素が蓄積され細胞が損傷してしまいます。βカロチンには、活性酸素を抑えて細胞の損傷を食い止め、代謝を促進して皮膚のダメージを修復する働きがあります。ニンジンやカボチャ、ミカンなど、オレンジ色の野菜や果物に多く含まれます。  

βカロチンは熱に強く、加熱しても栄養素が損なわれない上、加熱することによって体内に吸収されやすくなります。ニンジンを生のまま食べた場合、含まれるβカロチンが8%しか吸収されないのに対し、加熱して食べた場合は30%が吸収されます。  

さらに、βカロチンは油に溶ける性質があるため、ニンジンを油で炒めた場合、含まれるβカロチンの50〜70%が吸収できます。


(food.foto.ne.jp)

 

たんぱく質  

人間の体の約20%はたんぱく質でできています。たんぱく質は皮膚を作る素であり、体内にあるたんぱく質の約30パーセントがコラーゲンです。紫外線A波で破壊されてしまったコラーゲンを補給するため、肉、魚、豆類など、たんぱく質を多く含むものを食べましょう。たんぱく質の構成物質、アミノ酸のサプリメントを寝る前に摂るのもよいでしょう。

▲良質のたんぱく質を摂ることも有効
(food.foto.ne.jp)

 

【日焼け後におすすめ! 冷しゃぶサラダ(3〜4人分)】

材料
豚薄切り肉(たんぱく質) 300g

レタス、サラダ菜などの葉物野菜(ビタミンC、E ) 適量

ニンジン(βカロチン) 適量

小麦粉 大さじ1

酒 大さじ1 

☆マヨネーズ(ビタミンE) 大さじ3 

☆ポン酢 大さじ3

☆レモン汁(ビタミンC) 1/2個分

☆ゴマ 大さじ2

☆砂糖 大さじ1

 

作り方
1.豚薄切り肉を食べやすい大きさに切り、小麦粉と酒を揉み込む。

2.ニンジンは薄く切っておく。

3.鍋に沸騰させたお湯の中に1と2をサッとくぐらせる。

4.3を冷蔵庫に入れておく。

5.材料の☆を混ぜてタレを作る。

6.お皿にレタスなどを盛り付け、上に豚薄切り肉とニンジンをのせる。

7.タレをかけてできあがり。

 

日焼けの雑学

太陽の光はビタミンDを作る

人間が太陽光を浴びると、紫外線が体内のコレステロールを変化させ、ビタミンDを生成します。ビタミンDは、カルシウムの血中濃度の安定と吸収促進、免疫機能の向上、疲労防止といった働きがあります。また、カルシウムには不安を除いたり緊張を緩和するといった作用もあるため、ハワイなどの南国に明るく大らかな性格の人が多いのは、太陽光によって作られるビタミンDの働きによるものという説もあります。  

さらに日光浴には、体内時計を調節し、規則正しい覚醒と睡眠を促す効果があります。日焼け止めを塗って太陽光を浴びてもビタミンDが作られるので、1日30分以内の日焼け止めを塗った上での日光浴は、体によい影響をもたらすと考えられています。

 

日焼けにも依存性がある

太陽の光に当たると、体内でビタミンDが生成されることでリラックスした気分になったり、神経伝達物質「エンドルフィン」の分泌が促されることで気持ちが高揚する効果があります。まれに体がこれを「快楽」と受け止め、日焼け依存症になる人がいます。日焼け依存症は、ヘロインの依存症に似ているという説もあり、この依存症によって皮膚がんになったという例もあります。

 

中世ヨーロッパでは、日焼けした肌は貧しさの象徴だった

▲「ヴィザード」を装着して外出する中世の貴婦人

 

中世ヨーロッパの貴族女性たちにとって、日焼けは絶対的な敵でした。14世紀には色白の女性は純粋無垢であるとされ、16世紀には日焼けした肌は「屋外で労働している労働者階級」=「貧しさ」の象徴とされていました。そこで16世紀の貴婦人たちは「ヴィザード」という目と口の部分に穴の空いた仮面を装着して、顔を太陽の光に当てないようにしていました。  現在のヨーロッパでは「日焼けした肌の人はバカンスを楽しむ余裕があり、裕福である証拠」という考え方があり、日焼けが推奨される傾向にあります。


▲日焼け防止仮面「ヴィザード」

 

 

<参考URL>

環境庁 env.go.jp 

気象庁 jma.go.jp 

Wikipedia wikipedia.org 

NAVERまとめ matome.naver.jp

*この記事では「肌」は皮膚の表面、「皮膚」は皮膚内部の組織を含めたものとして表記しています。

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