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近所のスーパーマーケットへ行くと、クリスマスグッズが山積みされていました。まだ、11月と思っていたけれど、もうそんな時期なんですね。  

 

今から25年前のクリスマス。私はオレゴン州の高校にひとり留学中でした。街にクリスマスソングが流れ始め、人々が幸せな空気に包まれているかのようにみえていた頃、私はピンチに立たされていました。  

6月からステイしていたホストファミリーが離婚をきっかけに家族がばらばらになり、様々な問題が次々と発生。自分さえ我慢すればいいと思っていたけれど、状況は悪化するばかり。最後は身の危険を感じるほどにまでなり、その家族のもとで安全に生活することができなくなりました。  

当時、すごく消極的だった私ですが、縋る思いで勇気を振り絞り、高校の聖歌隊クラスで一緒だった友人数人に、自分を受け入れしてくれないかと声をかけていきました。  

その後、何の返事もないまま1ヶ月が過ぎ、日本に帰ることも考え始めていた、クリスマスが終わった翌日。思いがけず、1本の電話が掛かってきました。聖歌隊クラスでリーダーを務め、学校内でも人気者のキャーラからでした。弾む声で彼女はこう続けました。

「今年の私のクリスマスプレゼントは何か知ってる?毎年クリスマスプレゼントが入る靴下の中に、一枚の紙が入っていてね、そこに“チズを家族に迎える”って書かれていたの!。私、飛び上がって喜んだのよ〜。ずっと両親にチズを受け入れしたいってお願いしていたから。あなたが私のクリスマスプレゼントだったの」  

キャーラの言葉を聞いて、電話口で涙がポロポロ。ずっと一人ぼっちだと思っていた16歳の自分が、大きな愛に包まれた瞬間でした。この出来事は、私にとって一生分のクリスマスプレゼントになりました。  

キャーラの家族が私を受け入れてくれたおかげで、2つの全く異なるアメリカの家族との生活を経験し、私自身、成長することができました。大変感謝しています。  

留学が終わるまでの半年間、新しいファミリーのもとで落ち着いて勉強に集中することもでき、家族の深い愛に包まれたおかげで英語も上達し、幸せな生活を送ることができました。  

人生、起こることには、必ず全て意味があるんだ…。  

 

ピンチだと思う状況でも、逃げ出さずに向き合うこと。問題には必ず解決策がある。最後まで諦めず、なんとかなるんだと信じて行動すれば、突破口があるのだということを学びました。  

キャーラの家族が私にしてくれたように、私もまわりの人を笑顔にできる人間になりたい。オレゴン州で過ごした1年間の高校生活は、今でも私の大きな原動力となっています。

 

(日刊サン  2016/11/21)

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。

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