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移民法 Q&A No.42【トランプ政権による移民法への影響について】

大統領選挙キャンペーン中、トランプ次期大統領が極めて閉鎖的移民政策を提唱していました。大統領選挙が終わった後、トランプ政権で移民法がどのように変更されるかと懸念している方が多いと思います。今月のコラムでは、トランプ氏が提案した移民政策と今後の展開について詳しく説明致します。

 

Q:トランプ氏が具体的にどのような移民政策を提案しましたか?

A:アメリカ・ファースト」というキャッチフレーズの下で、トランプ氏は不法移民の抑制と米国人労働者の雇用を優先する移民制度の改正に焦点を当てました。トランプ氏のウェブサイトに掲載された移民政策に関する10のポイントを下記におさらいします。

1.メキシコ費用負担でメキシコとの国境に壁を築く

2.逮捕および釈放を止め、国境を越える不法移民は送還されるまで拘留する

3.罪を犯した外国人を、国、州、地方の法を駆使して国外に追放する

4.不法移民を保護するサンクチュアリ・シティ(聖域都市)を廃止する

5.児童到着の遅延行動(DACA)と呼ぶオバマ大統領の大統領命令は即刻効力を停止し、国境警備隊の人員を3倍にする

6.適切な審査が保証されない国では、ビザ発給を一時的に停止する

7.送還国に対し、強制送還される自国民の再受入を確約させる

8.生態認証付の出入国管理を、全ての検問所、空海港に実装させる

9.不法移民の就職機会をなくす

10.移民流入を抑制し、アメリカ人の利益にあったものとするように移民制度を改正する

 

Q:トランプ大統領が移民に関する公約を遂行することは可能でしょうか?

A:まず、アメリカの移民法は下記の典拠でできていることを理解し、それぞれに分けて見た方が良いでしょう。

●移民法の根拠が定められる移民国籍法(INA)

●米国国土安全保障省と司法省により、発行されるINAを運用する法令

●連邦裁判所や不服審査委員会による先例となる判決

●大統領が議会の承認を要せずに発令できる大統領命令

●さらなる説明を要する法的問題に取り組む、移民局から発行される通達  

その中でオバマ大統領が実施したDACAプログラム等の大統領命令をトランプ氏が就任してからすぐに停止できるものがあります。一方、連邦法であるINAを改正するには議会の承認が必要であり、少なくとも数年かかるでしょう。最後に、トランプ氏が新しい移民局(USCIS)のディレクターを任命、そのディレクターはグリーンカードやビザの審査基準を強化する新規の通達等を発行できる権力を持ちます。

 

Q:トランプ氏の公約の中で在米日本人にすぐに影響をもたらすことはありますか?

A:トランプ氏がメキシコからの不法移民やイスラム諸国からの難民の抑制を主張しましたが、彼の政権の下で移民法の執行を全般的に強化するでしょう。すなわち、今後、ビザやグリーンカード申請の審査を強化し、H-1Bビザの現場検査を増加し、オーバーステイした外国人に対する強制送還を強化すること等の厳しい措置を取ると考えられます。

 

(日刊サン2016.12.2掲載)

 

ダリル・タケノ 弁護士

ハワイ出身の移民法弁護士。日本での留学・勤務経験を生かし、日本人のお客様にわかりやすく法律サービスを提供している。英語だけでなく、日本語での移民に関する相談も受け付けている。

ウェブ: http://www.migrationcounsel.com

E-mail:[email protected]

 

お断り:質問形式のコラムになっていますが、すべての場合が当てはまるわけではないことご了承ください。 法的なアドバイスを必要としている方は専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。