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日本の相続は今…【第12回 会社設立と節税】

会社を設立して節税するということ

日本では会社を設立することによる節税は一般的です。というのも度重なる改正により、所得税の節税方法がほとんど封じ込められたからです。  

現在では不動産やゴルフ会員権の売却損と給与を通算する方法も認めらませんし、生命保険料はいくら加入して支払っても年間12万円しか控除できません。また、自分に対する給与はもとより、親族への給与の支払いも原則として経費にならないため所得の分散ができません。会社を設立すれば会社の本業の利益と会社が保有している不動産売却損の通算もできますし、保険料も種類によっては全額経費にできます。自分(社長)に対する給与も退職金も、親族役員への給与も経費になるのです。  

そして会社の利益に対する税率(実効税率21.42%~33.8%)は個人の所得税住民税の税率(最高税率55%)よりもはるかに低くなっていますので所得が500万円を超えるラインから法人成りを検討することになります。  

 

法人設立は相続対策としてもメリットはあります。ハワイにいながら日本の不動産を所有していた場合は相続が発生した時の手続きが大変ですが、法人名義にしておけば不動産の名義書換は不要となります。相続が発生しても会社は存続するため、不動産名義はそのまま。株主名簿を書き換えるだけなのです。  

また相続対策としての法人化は相続手続きの簡素化にとどまらず節税にも結びつきます。法人化すると不動産が株式になり、生前贈与しやすくなるのです。日本の贈与税の基礎控除は年間110万円で米国のように累積計算ではないため、連年贈与がよく行われます。その場合、不動産を部分的に毎年名義書換するとなると不動産取得税や登録免許税、司法書士への報酬などの負担が多くなり大変ですが法人で所有することによりこの問題は解決できます。  

 

株式の贈与時に注意しなければならないことは「贈与契約書」「取締役会議事録」を整備し、贈与税の申告をすることです。基礎控除以内の金額であれば申告は不要ですが、より確実に税務署に認めてもらうために税理士としては基礎控除をこえての贈与申告を勧めています。  

多くの日本の富裕層が法人名義でハワイ不動産を購入するのはこのような背景があるのです。

 

 

 

(日刊サン 2016/10/11)

 

内藤 克(ナイトウ カツミ)

税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。

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