日本では海外投資に対しての税務当局の姿勢が徐々に厳しくなっております。その関係で2014年から「国外財産調書」の提出を義務づけられております。
基本的にハワイに居住している方には関係ない話かもしれませんがハワイに投資している日本人や日本とハワイとを行ったり来たりしている方々には重要な制度です。
【提出義務者】
非永住者以外の居住者となっています。具体的には12月31日現在で日本に住所がある方が対象です。単に住民票があるだけでなく実際に居住している場合が対象ですが、住民票がなくても1年以上日本に居住している方も含まれます。また、日本国籍を有していない方でかつ過去10年間において居住期間が5年以下の場合は日本に居住していても除かれます。
【ハワイの不動産はどう記載する?】
国外財産調書には財産の種類、数量(面積など)価額、所在を記載しなければなりません。が、日本の財産と異なり評価や区分が難しいので部分的に省略してよいことになっています。例えばハワイのコンドミニアムも本来は土地と建物に区分しなければなりませんが、区分困難であれば一体として記載してもかまいません。不動産賃貸用としている場合は減価償却計算のために購入時に区分していると思いますが、その場合はその金額を用いることになります。また評価額はいちいち不動産エージェントに見積もってもらうのではなく固定資産税の評価額で記載してもよいことになっております。またプロベート対策のために夫婦名義にしている場合もあると思いますが、この場合は持分がはっきりしていればその持分、持分が不明な場合は1/2として計算します。(1/2した結果、5000万円を超えなければその年は提出する必要がありません)そのためjoint account, joint tenancy, tenants in commonなどの場合は注意が必要です。
【罰則が重い】
それではこの調書を提出しなかったらどうなるのでしょうか?罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっていますが情状により処罰する必要がないと認められるときには、刑を免除することができるとされています。むしろ報告しなかった海外財産から無申告の利子や配当、家賃などの所得が生じていた場合には、通常課税される加算税(罰金)の率に5%加算されることになるという懲罰的課税がある事のほうが重要なため、調書の記載により申告漏れを防ぐ事のほうが重要なのかも知れません。
(日刊サン 2016/12/6)
内藤 克(ナイトウ カツミ)税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。 |