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日本の相続は今…【第17回 出国税に要注意】

 

出国税、 日本から移住してきた 経営者は要注意

2015年7月以降、日本では国外転出時課税(いわゆる出国税)が創設されました。  

「えっ?出国するときに何の税金がかかるの?」「成田空港で払うの?」などいろいろな質問を受けますが、ほとんどの方は勘違いしています。  

この税金は「有価証券を1億円以上所有している方が出国する場合、含み益(評価益)があった場合にその部分に対して課税されるもの」で、出国する方全員に対して課税するものではありません。非居住者(日本に住所のない方)が日本の株式を売却しても特別な場合をのぞき日本で課税されません。そのため近年所得税の税率が高い日本から出国してから株式などを売却するケースが増えてきたこともありこの制度は設けられました。

 

【会社の社長さんは要注意】  

1億円も株式を所有していないから大丈夫」といっても上場株式だけでなく、自分が経営している同族株式も含まれるので注意が必要です。同族株式の評価は「出資額(額面)」ではなく内部留保(累積された利益)も加味された金額での評価になりますので思ったよりも株価が高くなるものです。会社の社長さんでハワイに移住してきた方は注意が必要です。  

移住ではなく期間限定でハワイに滞在するような場合は5年間の納税猶予が求められています。  

この納税猶予は「出国時までに日本での納税管理人を選定し、確定申告期限までに申告書を提出した上で担保の提供」もしなければならないため、うっかりこの手続きを忘れてハワイでの滞在を始めた場合はこの納税猶予の適用を受けることはできませんので注意が必要です。

 

【出国しなくても課税されるケースが】  

さらにこの出国税のわかりにくい点は本人が出国しなくても「有価証券を1億円以上所有している方が非居住者に株式を贈与・相続させる場合にも対象となる」ということです。たとえば日本にいる父親が会社の経営者(株主)であった場合、父親が所有している株式の時価総額が1億円以上であれば、ハワイにいる子供が贈与を受けたらたとえその一部であっても「贈与を受けたハワイの子供は贈与税」を「贈与した父親は譲渡税を」納付しなければならないケースが生じます。もっとも父親の有している株式に含み益がある場合のみが対象であるため、赤字が累積されている会社であれば問題ありません。こちらも納税猶予の制度がありますが制度が複雑であるため税理士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

 

(日刊サン 2016/12/20)

内藤 克(ナイトウ カツミ)

税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。

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