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日本の相続は今…【第18回 基礎控除以下でも】

 

基礎控除以下でも申告が必要な場合も…

 

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と改正されてから2年が経過し、亡くなった人に占める相続税申告の割合は10.3%まで上昇しました。しかし申告した人すべてに納税が生じているわけではありません。ゼロ納税でも申告しなければならない人たちもいるからです。相続税の申告では最もよく使われる2大特例というのがあります。ひとつは「小規模宅地の評価減」もう一つは「配偶者の税額軽減」ですが、これらの適用を受けるにはたとえ税額がゼロになる場合でも相続開始から10ヶ月以内での期限内申告が必要となるのです。  

ご自分で計算して税額がゼロになるからといって申告しないでいると、ある日税務署から連絡が来て「申告漏れですよ」と指摘され、税金を払うことになってしまいます。これらの規定は海外に居る相続人にでも適用されますので注意してください。

 

誰もが使う「小規模宅地の評価減」  

居住用宅地、貸宅地、事業用の土地などの場合、最大80%まで減額できるという制度です。これは相続後も今までと同じ状況で居住や賃貸している場合(換金化していない場合)に設けられている制度です。 よく適用されるケースのご自宅を相続した場合と貸宅地を相続した場合について説明していきます。

 

【居住用宅地】

・面積:330㎡まで(国内財産のみ)

・減額割合:80%

・取得者の要件:配偶者、同居親族、持ち家のない一定の別居親族

【貸宅地】

・面積:200㎡(ハワイ不動産OK)

・減額割合:50%

・取得者の要件:相続後も申告期限まで所有継続している一定の親族

 

「配偶者の税額軽減」  

相続で配偶者が財産を取得した場合に法定相続分(子供がいる場合は1/2)または1億6,000万円までは税金がかからないというものです。日本では長年連れ添った夫婦が協力し合って形成した財産であっても相続により配偶者が財産を取得すると相続税の対象となりますし、夫婦間での財産の移転についても厳密に贈与税が課税されます。そのため配偶者の老後の生活面、財産をともに築いてきた点、短期間に連続して相続がかかっては負担感が大きい点に考慮して設けられている制度です。

 

・対象者:配偶者(事実婚はNG)

・減額される額:つぎの①と②のいずれか大きい金額

①1億6,000万円

②配偶者の法定相続分相当額  

 

以上のように、「基礎控除以内だから申告しなくてよい」と思い込んでいると、あとから税務署から指摘をうけて申告し、加算税や延滞税もかかってきますので注意が必要です。

 

 

内藤 克(ナイトウ カツミ)

税理士法人アーク&パートナーズ(東京、有楽町)代表税理士、東京税理士会所属。税理士法人アーク&パートナーズ代表。ハワイと日本の税務法務専門家ネットワーク「ハワイ相続プロジェクト」代表。 弁護士会、金融機関、後継者団体で事業承継講演のほか、日経新聞・日経各誌への執筆実績多数。

www.the-arcist.com