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現地からお届け! 海外Food Trend【イタリア・トリエステ編 vol.2】

トリエステの庶民に愛される、Buffet da Siora Rosa

●国境の都市、トリエステ

トリエステは北東イタリアの外れに位置し、オーストリアの国境までは約1時間半という近さ。その立地から、トリエステの文化は南欧文化と中欧文化どちらからも影響も受けていて、それは食にも色濃く表れている。イタリアの食といえば、プロシュットがその代表格だが、こちらトリエステには中欧に近い特有の食べ方がある。今回は、トリエステの人々に愛され続ける創業1921年の老舗、Buffet da Siora Rosaをご紹介。

 

●トリエステ流、プロシュットには西洋わさび

旧市街のレストランやバーが並ぶ通りにあるSiora Rosa。真冬の寒い時期を除けば一年を通じて、通りに面したテラス席が賑わう。太陽を浴びることをこよなく愛するイタリア人にとって、開放的な空間で食を楽しむのは生活の大切な一部。とてもイタリアらしい光景だ。近くを通ればおいしそうな香りが立ち込めていて、素通りするのは難しい。

 

 

伝統的なトリエステ料理で有名なSiora Rosaで一番のおすすめは、トリエステ流のハムとソーセージの盛り合わせ。その一皿には、Prosciutto Cottoと呼ばれるハム、Cotechinoと呼ばれる脂ののった豚肉の腸詰、Porcinaと呼ばれる伝統的なトリエステ料理で豚の肩肉を茹でたもの、これらにソーセージが2種類。さらにザワークラウト、いわゆるドイツ流キャベツの漬物が添えられる。イタリアではザワークラウトはCrautiと呼ばれ、オーストリアとの国境に近い地域でよく食される。この一皿のトッピングには、マスタードとKren(クレン)と呼ばれる西洋わさびがお決まり。クレンは中欧から届いた食文化で、この地域でもドイツ語をそのまま使用している。日本のわさびのような辛さはなく、香り高い。

 

●イタリア料理のニョッキを中欧風に

続いて人気が高いメニューは、伝統的なトリエステ料理である大きなニョッキ。ニョッキはイタリア全土にある料理だが、主に北イタリアで食され、地域によって少しずつ異なる。ポテトで作られるニョッキが一般的だが、こちらではライ麦のパンにスペックという燻製した生ハムとハーブで作るニョッキだ。そのニョッキを、ハンガリーの伝統料理であるグヤーシュとともにいただくのが、この地域特有の一皿だ。グヤーシュとは、牛肉、ラード、玉ねぎ、パプリカなどで煮込んだシチュー。こってりとしたこの中欧料理はGnocchi con Gulaschと呼ばれ、特に冬場に食べたくなる一品。グヤーシュの他には、豚のスネ肉のロースト添えのニョッキも、トリエステ料理として知られるGnocchi con Stinco。

 

●トリエステ料理は、Siora Rosa

イタリアの中でも特に、外食を好むトリエステの人々は、いわゆる庶民的なトリエステ料理をレストランでも日常的に味わう。Siora Rosaは伝統的な調理法を崩さずに、トリエステの人々の望む地元の味を提供してくれる。だからこそ、100年にも近い年月を経た今も、トリエステではなくてはならない町のビュッフェとして愛され続けるのだろう。

 

 

ライター  /Mao Gasperini

イタリア、トリエステ市在住。2010年より5年間、トルコのイスタンブールでベリーダンサーとして活動。2015年にイタリア、トリエステへ移住。イタリアの食に魅了されて、食べ歩き、料理研究の毎日を過ごす。