食の王様、da Nando
●小さな町の、大きな贅沢
贅を尽くした美食をこよなく愛するイタリア人。美的感覚の高いことで知られているが、食を追求する“美食感覚”の高さも並ではない。そんなイタリア人が舌鼓を打つレストランが、da Nando(ダ・ナンド)。トリエステから1時間も車を走らせると、小さな町の外れにふと現れるレストラン。辺鄙な立地にもかかわらず、da Nandoには遠方から多くの客が訪れる。それは、ここでしかお目にかかれないような、うっとりする食が待っているから。
●春の楽しみ、アスパラガス
da Nandoでの食事は、年に数度の特別な日にしたい。そんな特別感がある。年間を通して、旬の味覚を大切にするこのレストラン。特に春のアスパラガスと冬のトリュフがおすすめの季節。旬のアスパラを食べることは、イタリア人にとって春の楽しみのひとつ。アスパラは地中海が原産とあってその味は濃厚だが、しかし高価な野菜のひとつだ。da Nandoは、厳選された緑と白のアスパラを絶妙に調理してくれる。
イタリアでは、アスパラ料理は卵とともに、というのが常である。da Nandoの調理法は、シンプルにうずらのゆで卵とスペックという燻製した生ハムのみ。レモンにワインビネガー、エクストラヴァージン・オーリブオイルというさらっとした味付けで、素材の味を楽しむ。イタリア料理はシンプルだからこそ、食材やオリーブオイルなどの調味料の質がとても重要になる。オリーブオイルは、まさに地中海地方の宝。特にイタリア産オリーブオイルは、オリーブ栽培の古い歴史と土地の特徴を反映した香りと風味の高さで知られる。da Nandoの料理を味わうと、影の立役者オリーブオイルからも、オーナーの食を追求する細やかな心遣いが感じられる。
●冬の楽しみ、トリュフ
秋の紅葉も深まるころ、イタリアの人々はそわそわしはじめる。世界三大珍味のひとつ、トリュフの季節が到来するからだ。da Nandoのトリュフ料理は、冬には外せない。このレストランでは、北西イタリアのアルバ産の高価な白トリュフを贅沢に盛り付けてくれる。トリュフの本場イタリアでは、パスタや卵料理、魚料理、肉料理とトリュフの食べ方は多岐にわたる。しかし食べるべきトリュフ料理は、パスタ料理と卵料理。打ちたてのタリオリーニと呼ばれる細麺の生パスタの上に、パスタが見えなくなるほど、白トリュフを目の前で削ってくれる。トリュフの芳醇な香りがたちまち広がり、思わずうっとりとする。生パスタに絡んだ白トリュフが口の中でとろける。まさに幸せなひととき。
パスタの次は卵料理。テーブルに運ばれる小さなフライパンに、半熟の目玉焼きと盛りだくさんのトリュフがのっている。朝食であるはずの目玉焼きが、贅沢なディナーに変身する。とびっきりの食材に溢れたイタリアらしい、素材を生かした簡素な調理法だからこそ、美食が生まれる。
●地中海世界の恩恵を受ける
ここフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州でもっとも高価なレストランのひとつ、da Nando。気軽に足を運べるレストランではない。しかし、イタリアで極上の美食を楽しむなら、ぜひともお試しいただきたい。da Nandoのオーナーが選び抜いた地中海世界の食材とその絶妙な調理法は、ここイタリアでもなかなか出会えない。フィナーレでいただくデザートを口にするとき、満たされた心で、食の醍醐味が味わえる。
【引用元】
https://www.tripadvisor.it/
http://chiaraandreola.blogspot.it/
http://www.foodspotting.com/
ライター /Mao Gasperini イタリア、トリエステ市在住。2010年より5年間、トルコのイスタンブールでベリーダンサーとして活動。2015年にイタリア、トリエステへ移住。イタリアの食に魅了されて、食べ歩き、料理研究の毎日を過ごす。 |