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老後の日本帰国シリーズの5回目は“永住権か市民権か−その2”です。永住権か市民権かの選択にあたっての実情をお話ししたいと思います。  

 

米国での体験を通じて特に東日本大震災の後心を動かされた事柄に「日本人、日系人の祖国愛、郷土愛(パトリオティズム)」がありました。それは東日本大震災の後のことでした。全米各地で日本人・日系人が個人、組織を通じて、また自らグループを組織して義援金、支援物資を集め、日本に送るべく多くの方たちが立ち上がりました。それは誰に強制されたものでなく、自然に心の底から湧きあがる、祖国日本を思う心が突き動かしたものでありました。  

また、ある機関の調べでは永住予定の日本人も、国際結婚された方も必ずしも米国籍を持っている人は多くないというのです。郷土を愛するがゆえに己のアイデンティティーとして日本国籍は破棄したくないということでしょうか。  

それに引き換え、中国や韓国系の人々は家族を呼び寄せ定着するという大きな目的を前提に米国に移住するケースがほとんどです。  

無論、米国に渡った日本人の中にも米国社会で生きていくために米国籍を取得される方も居られます。しかしそれには一大決心を求められることなのです。現実に米国籍を取得される方の中には結婚、仕事、教育、親の介護等の理由で仕方なく米国籍を所得される方が多くいらっしゃいます。矛盾するような話になりますが、そういった方は米国籍を取得後も、何とか日本国籍を保持し続けるために色々努力をされる方もおられます。国籍喪失届を提出せず、パスポートも努力して継続取得されたりしています。それは日本人としてのアイデンティティーを失いたくないという裏返しの想いがそうさせるのでしょう。  

国籍は行政上の属性区分、アイデンティティーは心のよりどころの区分であることを強く感じさせられます。そうした方を私は“自称二重国籍者”と呼ばさせていただいていますが、日本の国籍法では二重国籍は認めていません。米国籍を取得された時点で日本国籍は喪失することになります。またパスポートの不正申請、不正記載は罰則の対象となります。先日周りの方に二重国籍は認められているから大丈夫と言われ深く考えずにお子さんとご自身で米国籍を取得された方から、日本は二重国籍を認めていないことを今知ったのだが、日本国籍に戻れないかといった相談がよせられました。  

 

次回に続きます。

 

市川俊治

民間企業勤務後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランティア制度の第1期生としてNY更にSF総領事館に合計6年間勤務。その官と民の経験・知識を基に海外在住者の年金・国籍・老後の日本帰国の問題のアドバイスを行っている。

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