ザクロ、Pomegranate Oilは酸化しやすいので、冷蔵保存で早めに使い切る。
子どもの頃、ビワやイチジク、柿やザクロの実は買うもんじゃない果物だった。ランドセルをしょった学校帰り、近所の家の庭の実を、無断でもいで食べても叱られないシロモノだった。我が家にもザクロの木が1本あって、赤い花のお尻の部分が膨らみながら、日に日に大きな実になっていくのを眺めているのが好きだった。その実を食べるのも大好きで、いっぱい頬ばってみたり、ポロポロと粒をはがしながら一粒ずつ口に運んだり、遊び食いをするにはうってつけだった。
希少なザクロオイル、 500kgの種子から1kgだけ。
先日来、ウエルネスオイルの取材をする中で、ザクロオイルとも初対面した。オイルを見た瞬間、子どもの手にも小さかった一粒の果肉の中の、さらに小さな1mmにも満たない種子を思った。あんな極小の種子からオイルを搾るなんて、ニンゲンはそこまでやるんだと、内心ドン引いた。
聞けばやっぱり、500kgの種子から1kgのオイルしか搾れないという。ごもっとも。ところが上には上がいるようで、グミの仲間のシーバックソーンオイルというのは、1000kgから2kgに満たない量しか搾れないんだそう。
樹木の命を芽吹かせ、大きく育てる生命力の元となる種子の、最もエッセンシャルな栄養となるオイルには、ニンゲンも恩恵を受けられる健康成分がたっぷり。だから執念で搾る。しかもその科学的解明は、近年やっと明らかになりつつある途上だ。
ザクロだって、数年前は女性の更年期障害に効くとブームになった。バストアップするなんてことまでいわれ、美容家たちはザクロジュースを愛飲した。ところが科学的に検証すると、ザクロに含まれる女性ホルモンのエストロゲンは、ごく少量で、しかも肝臓で代謝されてなくなってしまうことがわかった。ただ、あの赤い色は、さまざまな抗酸化物質のポリフェノールだから、健康効果がないわけではない。
ザクロオイルのプニカ酸は、 ガン細胞も抑制する!?
で、ザクロブームはフェードアウトするのかと思いきや、ここにきて俄然、ザクロオイルが医学的に注目されているのだ。
ザクロオイルの主成分は、“プニカ酸”と呼ばれる、オメガ3系が進化した脂肪酸(共役リノレン酸)でできている。そして70〜80%と、ほかに類を見ないほど高含有している。脂肪酸はふつう、細胞膜を作るために働くが、プニカ酸は細胞膜の中の中にまで入り込んで、ミトコンドリアに直接作用する。
ミトコンドリアは私たちに生きいきとした活力を支える原動力だ。年齢とともにミトコンドリアは減ってしまうが、ザクロオイルのプニカ酸には、ミトコンドリアを元気づけ、増やす働きがある。
代謝が上がるから結果、脂肪が燃焼して痩せやすくなる。筋肉もつくといわれる。ミトコンドリアレベルのエイジングケアなわけだから、皮膚の再生やシワ・シミ・たるみなどにも有効なはずである。さらにプニカ酸は、ガン細胞の血管侵性を止めて、ガンを抑制するという研究論文も複数発表されている。
1000万年以上の昔からザクロの実をならせ、古代ギリシアや中国漢方、アーユルヴェーダの古文書にも薬効がしたためられているザクロ。貴重なスーパーウエルネスオイルのさらなる解明を、乞ご期待!
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |