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今日のNYCは風ビュービュー。寒い中での強風は身も心も凍えてしまいそう。でもそんな中、心をあったかくしてくれる瞬間が何度もある。

朝、入ったお店の店員さんがはじける笑顔で“Have a nice day!”と言ってくれるその一言で気分が変わり、仕事場のスタッフさんたちも笑顔でいい言葉をかけてくれる。アメリカで普通に日々の生活で交わす言葉ですが、この何気ない一言一言がとても大きい。言葉の力は偉大だ。おかげで、冴えない気分でスタートした1日も、ころっと気分良く過ごすことができる。

 

言葉の力といえば、私の93歳になる祖母。戦時中は空襲と結核で死にそうになり、50代では癌を2度乗り越え、60代では盲腸が破裂寸前で命が消えかけたことだってあった。今までの人生で様々な経験を乗り越えてきている彼女は、何があっても「ありがたい、ありがたい」をよく口に出し、だからか、ここ何年も風邪を引いたことがなければ、病気にも一切かからず、毎日飲んでいる薬と言えばアリナミンのみ。(彼女は薬だと思っている)インスタントラーメンから、ドーナツやらお酒やら、好きなものを好きなだけ口にする。そして口癖は「あ〜、幸せ! 極楽や。」

そんな私のおばあちゃん、国内旅行、海外旅行にも積極的だ。アジアの国をはじめヨーロッパやオーストラリア、バリ島、ハワイなど様々な国を何度も旅している。80歳の時は、私と主人の住むNYCへやってきた。地下鉄の駅構内で電車を待っている時には、ふと気づくと隣に居た、身長が祖母の3倍近くありそうな黒人男性と、お互い自国の言葉で何やら笑顔で会話? のやり取りをしていたし、ある日は本場のJAZZを聴きたいと言い出し、夜遅くに向かったジャズのライブ終了後、黒人トランペットプレイヤーに「もう、感動しました!」と通じない日本語でお構いなしに話しかけ、喜び溢れる熱烈なハグを交わしていた。

NYの旅から13年が経つというのに、未だに「あの時に見たNYの空の青さは忘れられんわ〜」と何度も繰り返す。デイサービスでもそれを言うらしく、先生からボケの兆候と間違われ、「本当におばあちゃんはNYに行ったことがあるんでしょうか?」と心配され、母親に確認されたことは、今でも家族の笑い話だ。

 

いつも機嫌が良く、楽しそうな祖母を見ていたら、人生、何でもできるような気になってくる。自分の発している言葉が自分の人生を創っているのだとつくづく気づかされる。

彼女の次なる夢は、来年のお正月また家族とハワイで過ごすこと。そして、もう一度NYで、青い空を見ることらしい。その時にはまた、このコラムで報告できる日が楽しみだ。

 

 

大森 千寿
香川県生まれ。一人っ子。8才の時に韓国ホームステイを経験。12才の夏休みはオレゴン州にホームステイ。16才でオレゴン州のハイスクールに1年間留学。2003年自分探しで訪れたNYで運命の人と出逢い国際結婚。2010年ハワイにホテルコンドミニアムを購入したことがきっかけとなり、ハワイで過ごす時間が増える。現在はアーティストで夫のアダムウェストンのマネージメントをしながらハワイ、NY、日本を拠点に活動中。www.chizuomori.com