ブランド化したい“ワイキキマダコ”。糠でもみ、80度の湯で7〜8分茹でるだけ。
刺身に、カルパッチョに、和え物に、タコ飯に、冷凍も可!
前にハワイの、ダイアモンドヘッドの沖で捕れる赤海老のおいしさを書いた。今回は沖じゃなくて麓、浅瀬のタコ! タコ釣りが好きなローカルの友人がいる。明け方の引き潮の時間を狙って、ワイキキの東端の岩場でタコを釣るんだという。モリで突く捕り方もあるけれど、それだとタコを傷つけるから、手釣りなんだと自慢する。
ダイアモンドヘッドの浅瀬で、 おいしいマダコをゲット。
5年ほど前のこと。釣りたてのマダコをくれたので、茹でてイタリアンパセリとオリーブオイルでマリネしたのを、彼らの家でのポットラックに持参した。そうしたら、なんでこんなに柔らかくておいしいんだ! と大絶賛された。 「糠でもんで、80度くらいのお湯で茹でるだけだよ」と、サラリと解説したいのに、糠を英語でなんと説明するのか、糠漬けの漬物にまでさかのぼるべきなのか、タコ足配線のようにこんがらがってうまく説明できなかった。 ある朝起きると、私のコンドミニアムの部屋のドアノブに、重いビニール袋がぶら下がっていた。潮くさい中を覗くと、数匹のタコだった。やられた! 以来私は、茹でダコ係を拝命し、せっせと仕込んでは、釣り人の家に配達し、タコのおすそ分けにあずかっている。
タコは塩もみするより、 糠でもんだほうが柔らかくて美味。
私の茹で方はこうだ。タコは真水にさらすと味が落ちるので、「作業は手早く」がモットー。まず、頭を裏返して、中の内臓を外す。褐色のスミ袋を傷つけないよう筋を切る。そしてタコ1匹あたり半カップほどの糠でぬめりを取りながらもむ。ぬめりは粘液状のたんぱく質で、これが残ると雑味が出る。だからタコエステシャン気分で強くなく弱くもない、スクラブマッサージを施す。で、吸盤の中まできれいになったところで水洗いをして糠を落とす。塩もみでぬめり取りをすると塩気がきつく残ったり、硬くなりがちなので私はもっぱら糠派だ。 茹で加減はミディアムレアが好き。全身筋肉、全身たんぱく質のマッチョなタコは、沸騰した湯で茹でると、身が硬くなりがちだ。2kgくらいのタコなら、80度の湯で、7〜8分茹でるのがミディアムレアの目安。料理本の中には、頭を持って足先から茹でると、8本の足がくるんときれいにカールする、と書いてあるのもある。だけどそうすると、一番細い足先から茹でることになり、タコの太ももや(実際は触手なので足ではなくて腕)頭(胴)など、火の通りにくいところが後回しになってしまう。だから私は、均一にミディアムレアにするために、タコを逆さ吊りにして、頭から太ももまでを先に湯に入れる。茹で上がったらザルに上げて冷ます。急冷してもいいけれど、自然に冷ます“オカアゲ”のほうが柔らかく、かつ風味も良いように思う。
高血圧や貧血予防、疲労回復に、 タコはタウリンを高含有。
タコは高タンパク低カロリーの代表選手のようなヘルシーさ。アミノ酸の一種のタウリンを高含有し、肝臓の解毒作用を高め、コレステロールの安定、強心作用、眼精疲労にも役立つ。アセチルコリンは神経を癒してくれる。 この茹でたてのタコは、明石のタコもびっくりのおいしさ。“ワイキキマダコ”と、ブランド化したいくらいです。
奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター 『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。 |