自宅で簡単ヨガ
今ではすっかり人気が定着したヨガ。ハワイでも日本でも、たくさんのヨガスクールがありますが、 興味はあるけど体験する機会がないという方も いるのではないでしょうか。でもヨガって自宅でも簡単にできるのです。大切なのは無理しないことと、継続すること。楽しくヨガを実践して、心と体の美しさを手にいれましょう。
初心者向けポーズ
くつろぎのポーズ(屍のポーズ)
効果:疲労回復・ポーズとポーズの間に行い、効果を十分に生かすこと ヨガの基本のポーズ。疲労回復のため、ポーズの間の小休止に必ず行うこと。ゆったり横たわることで、その 前に行ったポーズの効果が いっそう高まります。
1. あお向けに寝る。
2. 両足は腰の幅に開く。 両手は手のひらを上にして、体側からちょっと離して投げ出す。
3. 全身の力を抜き、深く静かに呼吸する。
4. 余計なことは考えない。体から疲れが抜けていくのを 感じるはず。1・2分行う。
5. 深く息を吸って、スッと上半身を起こし、次のポーズに移る。
猫のポーズ
効果:老化防止・筋肉の硬化や萎縮をとる・神経の安息・背中、お腹、腰、足の線を美しく引きしめる。 背中のこわばりは動作を鈍くさせ、老化を招きます。このポーズは背中を中心に、全身の筋肉の凝りを取り除く効果があります。猫が伸びをするイメージで行います。
1. 両手、両膝をついて 四つんばいになる。
2. 息を静かに吐きながら、 背中をまるくしていく。 頭は腕の内側に入れる。
3. できるかぎり背中を丸め ながらお腹をひっこめて、 息を吐きつくし、そのまま 呼吸を3秒間とめる。 ゆっくりと息を吸いながら、 全身の力を抜き、 最初の姿勢に戻る。
前屈のポーズ
効果:便秘・糖尿病・肝臓肥大・脾臓肥大・痔・老化を防ぐ・ウェストとヒップをひきしめる・疲労をとる 老化や疲労は、首の筋肉の硬化や腰のこわばり、足の裏の筋肉の萎縮が原因。腹部全体の筋肉をひきしめれば、お腹と腰の脂肪がとれます。無理せずできる範囲で。
1. 足を伸ばしてすわり、 両腕を前に伸ばし、深く息を 吸って意識を丹田におき、 アキレス腱を伸ばす。
2. 息を吐きながら、上体を 前後に2・3回倒す。
3. お腹、胸をももにつけ、 頭をひざのあいだにうずめる ようにする。ひざはまげないこと。 両手が足先よりも遠くへ突き 出るまで前屈する。 足の親指をつかみ、 手前に引きつけると さらにアキレス腱が伸びる。
4. 意識を丹田に集中し、 息を吐きながらひじに力を入れ、 吸いながら力を抜く。 この呼吸をリズミカルに繰り返す。
コブラのポーズ
効果:血行促進・便秘・生殖器異常・無気力・美しいプロポーションをつくる 背筋、胸筋、腹筋が柔軟になるので、背骨と交感神経の血行が正常になる。仙骨を刺激するので美容に最適。心のこわばりもとりのぞく。
1. うつ伏せに寝て、 静かに呼吸しながら 手のひらを肩の 下に半分くらい入れる。肘は開かない。
2. 息を吸いながら、ゆっくりと上体を起こしてゆく。 手の力は使わず、背骨の反る力だけで行うこと。
3. 上体を起こしたら、両腕の力を加えてさらに上体を反らす。 おへそから下は床から離さないこと。
4. 天井を見つめたまま、意識を脊椎の圧迫されている ところに集中させる。息を吸い、10秒ほど息をとめる。
5. ゆっくり息を吐きながら、1の姿勢に戻る。
三角のポーズ
効果:悪い姿勢・貧血・耳なり・内臓の位置を整える・器官のうっ血・便秘、下痢の解消・足を長くする・イライラ解消 わき腹と胸の筋肉のこわばりを解消するので、姿勢のかたよりが治り、足が長くなる。わき腹をもむだけでも便秘や耳なりに効果的。
1. 両足を肩幅の倍に開いて立つ。 両手を肩の高さに上げて、 真横に伸ばす。手のひらは下向き。 両手は床と平行に保つ。
2. 息を吐きながら上体を真横に曲げてゆく。 ひざを曲げないこと。右手の指を右足首に つける。顔は上に向けて、左手の指先を見る。
3. 同じように左側も行い、 左右あわせて1回。 これを2・3回繰り返す。 やりづらい方を2回多くやる。
木のポーズ
効果:動脈硬化・悪い姿勢・内臓衰弱・足の贅肉をとる 右足を上げると胃など左側の内臓、左足を上げると肝臓など右側の内臓が刺激され働きが整う。バランス感覚が高まり、足をほっそりさせることができる。
1. 左足で立ち、右足の裏を左足の ももにあてる。右ひざを水平に保ち、 左足の親指と土踏まずに力を入れる。
2. 背筋を伸ばし両手を合掌、 ひじは水平に。深呼吸する。
3. 同じように右足立ちも行う。
鋤のポーズ
効果:老化防止・腰痛・首のねじれ・神経痛・便秘・背中とお腹のぜいにくを取る 柔軟体操にも取り入れられている、美容効果の高いポーズ。 ポーズを完成するまで、 毎日練習するとよい。
1. あお向けに寝て、 腕は体の両側に伸ばして、手のひらを床につける。
2. ゆっくり息を吐きながら足を上げ、床から45度の角度で 一度とめる。
3. 足をさらに上げ、垂直になったとき、足が頭を越えたとき も、それぞれ一度動きを止める。ひざを曲げない。 両腕は床から離さないこと。
4. 足が床についたら、かかとをできるだけ遠くに持っていき、 アキレス腱を伸ばす。あごを胸につける。
5. 10秒ほどゆっくりと呼吸する。
逆さ立ちのポーズ
効果:老化防止・内臓機能の強化・美肌効果・体型を整える 逆立ちほど難しくないけれど、効果は逆立ちとほぼ同じ。ヨガで最も重要なポーズのひとつ。美容ポーズとして最高のもの。
1. あお向けに寝る。手のひらを床につけ、 体の両側に置く。
2. 息を吐きながら、ゆっくりと足を上げる。 ひざは曲げない。
3. 腰、背中を上げていく。腰が上がったら、 腰を両手で支え、体と足が床と垂直になる ように伸ばす。
4. あごはできるだけ胸につける。首の後ろ、 両肩、両ひじは 床に密着させて体を支える。
5. 目を閉じて意識をのどに集中する。 ゆっくりと呼吸する。
6. 続けられるだけ続ける。足を下ろす時は ゆっくりと。初心者は3までを練習するとよい。
お腹に力を入れることが健康の秘訣
ヨガでは全身がひとつになって動くこと、自然体で動くことが重要だと教えています。心と体を総合して動かすときの中心点を、ヨガでは「ウディアナ」、中国語では「丹田(たんでん)」といい、腰とお腹を指します。 この中心点の動きを高めれば、健康維持能力が高まります。ヨガの訓練でも、この丹田をつくることが最大の目標のひとつになっています。丹田力を高めるには、肛門が締まるような状態を工夫すること。それには上半身の力はぬけるようにし(虚)、下半身に力が入るようにします(実)。日本では昔からこのことを「上虚下実」や「頭寒足熱」といいます。 ヨガをするときだけでなく、普段もこのことを意識していると良いでしょう。
ヨガをはじめる前の注意
スポーツが体の向上だけを目標としているのに対して、ヨガは心と体をひとつにして自分をコントロールすることを目標においています。ですから、どのポーズも呼吸を調整し、精神を集中することをお忘れなく。
また、ポーズを行う際は、表の次は裏、右の次は左というふうにバランスをとりましょう。その他注意点をあげておきます。
●ヨガの前は必ずトイレに行っておきましょう。また、食後1時間とお酒を飲んだ後は行わないこと。
●楽しんで行うこと。いやいやながらだと、緊張して重心が不安定になる。
●体と心をくつろがせてから行う。体は柔軟体操(肩・首を回す、手首・足首を回す等)で、心は合掌(手をあわせる)でリラックスしておくこと。笑うのもよい。心身両方には、座禅や深呼吸も効果的。
●無心で行うこと。何も考えず、体が自然に動くままにすなおに行う。
●呼吸のリズムに注意を合わせること。ポーズは原則として息を吐きながら動作を行う。息を吐くときは、体がゆるむので無理がかからない。
●動作はゆっくりと行うこと。反動をつけて動かさないように。
●1つのポーズが終ったら、ぼんやりとくつろぐこと。「くつろぎのポーズ」を行って呼吸が静まるのを待つ。
それではポーズを試してみてください。1回でできなくても、繰り返すことで自然にできるようになります。
日常の悩みを治すヨガ行法
生活の中でちょっと困ったことがあるときは、ヨガの行法が驚くほど効果を発揮します。
●頭痛:薬を飲む前に、はちまきをしたり頭を冷やしたりして頭蓋骨を引きしめ、血行をよくする。頭蓋骨の片側が下がっている場合が多いので、誰かに後ろから見てもらい、耳の高さが低い方を教えてもらう。下がっている耳の後ろを、軽くげんこつで下から上へとたたきあげる。こうすると、脳のうっ血がとれて頭もすっきりする。
●寝不足:うつむいて、後頭部をげんこつで軽くたたく。お相撲さんのようにひざを左右に開く屈伸運動をすると、眠気がおさまる。
●不眠症:伸びのポーズをおこなって、全身を伸ばすとよい。筋肉は伸ばすと休まる。夕食は消化のよいものをとる。夜食を食べると内蔵の動きが活発になり、自律神経が興奮して安心できない。寝る前に深呼吸、座禅などで心をくつろがせる。
●快眠法:枕は低めのもの、敷布団は固めのものがよい。寝床に入ったら、子供の頃の楽しい思い出を思い浮かべ、筋肉をゆるめる。これは何千年も前からヨガ行者がおこなってきた方法。
●白髪防止法:過労や気苦労、大病、突発的な恐怖などが原因のことが多い。そんなとき、人間の頭皮はたるんで活力を失っている。頭皮の血行をよくすること。逆立ち、逆さ立ちのポーズ、ねじりのポーズがよい。
●はげない法:頭皮が硬化し、血行が悪くなって栄養不足になるのが原因。逆立ち、逆さ立ちのポーズは頭皮を引きしめ、血行をよくする。腰の力が弱いとはげやすい。マラソンなどで足腰を鍛える。また、つかれを翌日まで残さないように、十分に休息をとることも必要。
●近眼:左手で右の耳たぶを、右手で左の耳たぶをつかむ。両耳を下へ強く引っぱりながら、くりかえし強い息を鼻から吐き出す。耳は目のツボである。息を吐いた時はお腹をへこますこと。 眼球を上下左右、斜めに動かす。近眼の人は目の筋肉が萎縮しているので、なるべく頻繁に遠くを見て目の筋肉を伸ばす。後頭部のちょうど両目の裏側に当たるへこんだところを、親指で突くように指圧してもよい。
●目の疲れ:正座をして両手を後ろで組む。息を吐きながら上体を前に倒し、両手を上に突き出しながら目を強くつむる。
●肩や首の疲れ:慢性的な肩こりや首の凝りは、肩や首だけがこっているわけではない。心の緊張や疲労感、内臓や血圧の異常、栄養のアンバランス、悪い姿勢、様々な要因が積み重なっている。 両腕をまず左右に水平に伸ばし、前後にねじる。逆立ち、逆さ立ちのポーズ、鋤のポーズのどれかを行い、最後に腹式呼吸を6回。
●にきび:肌は心理状態と深いかかわりがあるので、なにかうれしいことがあると肌はきれいになる。また、食事の量や内容がおよぼす影響も大きい。なるべく甘いものは食べない。過食、偏食、に注意する。姿勢のゆがみも影響する。たとえば、前屈ぎみだと額と口の下、重心がかたよっていると片側にだけニキビができる。ねじれていると頬に、重心が上がっていると口のまわりにだけできやすい。
●いびき:首と腰のねじれが主な原因。いびきをかいている人の枕を急にはずしたり、体をゆすぶってやるとよい。くびがまっすぐに伸びれば、いびきはかかなくなる。
●風邪:栄養の過不足が原因。過食、偏食という食生活をまず変えることが大切。風邪をひくと、筋肉がこわばって縮んでくるので、よくほぐすこと。汗をかいてからよくふいて、静かに寝る。意識的に咳、くしゃみをすると、体温が上がり、体がやわらいでくる。
●二日酔い:両手を横にしてひじから上を直角に上に伸ばし、げんこつをにぎる。息を口からゆっくり吐きながら、上体を左右にねじる。このとき、アルコールを体から吐き出すことをイメージする。息を吐ききったら、力を抜いてもとに戻る。そのあと後頭部を軽くたたいておく。
●食べ過ぎでお腹が痛い:強く深く息を吐きながら、できるだけ前屈する。その状態でしばらく体をとめたあと、息を吸いながら体を後屈させる動作を数回繰り返す。
●便秘:便秘のときは右腕が凝っているのでマッサージするとよい。左の手の平を右手の中指でくりかえしこする。左の手の平には腸のツボがある。朝目が覚めたら、寝たままの姿勢で両膝を立て、お腹に「の」の字を書くようにマッサージする。
寝相による自己診断法
人が寝ているところを見れば、その人の健康状態はすべてわかります。それでは寝相であなたの自己診断をしてみましょう。
●うつぶせ:腎臓や胸部の働きが弱まっていたり、下垂している。排泄機能や呼吸機能が不完全であることを示している。腰に無理がかかっているために、性ホルモンのバランスが悪くなっている。
●横向き:横向きに寝ている場合、昼間疲労した方を上にして異常な部分を休める姿勢になっている。下側の体温は高くなるので、異常があるときは冷えるようにするからである。肝臓の悪い人は右側を上に、脾臓や胃の悪い人は左側を上にして患部を保護している。疲労が積み重なり、凝りとなって固定した場合、麻痺状態になっているので、異常な部分を下にして眠り、血液を異常な部分に集めて体を修理する体勢に入っている。
●あお向け:あお向けで、手足を下にまっすぐのばしているのが健康な状態。「くつろぎのポーズ」と同じで、この体勢で寝ているときが一番疲れがとれる。疲れがひどい時は、両膝を立てて寝ると腰椎1番がゆるんで頭の疲れもとれる。まっすぐに足をのばして寝づらいときは、どこかに異常がある。例えば、片方の足を上にして足を組んだり、膝を曲げているならば、恥骨がふぞろいになっていてニキビ、そばかす、水虫などの皮膚病になりやすい。排泄も不完全になるので便秘になりやすい。左右の足を重ねているときは、のせた足の側の内臓が弱っている。右足が上ならば肝臓異常、左なら胃である。足を大きく開いているのは、大腸か生殖器の異常。ひざを内側に曲げるのは消化器が弱っている証拠。ひざを曲げ、片方の膝にのせるのは、生殖器、泌尿器に問題がある。
●両手を上に上げる:食べ過ぎ。肋骨を広げて胃をゆるめている。
●枕、うで枕をする:枕は体にゆがみを与えるのでしないほうが良い。手を組んで頭の下に入れてねむっている人は、肩や首が凝って、頭が疲れている。枕がないと寝られない人は、猫背で首が縮んでいる。
●ずり上がる・ずり下がる:寝ている間に頭の方に乗り出してくる人は、血行が良すぎて暑いから。逆に、足のほうへずり下がりがちな人は、血行が悪く、体が冷えている。ビタミンとミネラルが不足していて、神経に異常をきたしている場合もある。
●両手を胸に乗せる:これは心理的に不安があるから。心臓は血液を送り出すポンプの役目をしているので、手を置くと動きが鈍る。恐ろしい夢でうなされたりするのもこんな寝相のとき。
参考資料:『ヨガの喜び』沖正弘、『生き方としてのヨガ』龍村修、『ヨガ呼吸修正法』龍村修 イラスト:花福こざる