日刊サンWEB

過去記事サイト

HAWAII! OISHII! ハワイイ! オイシイイ! Vol.54

Bynikkansan

5月 20, 2017

カイムキに誕生した“ビーガン・ヒル”で食べた、Satoriボウル。

 

 

クリスチャンにとって、復活祭(今年は4月16日)までの今の時期は、1年で最も大切な日々だ。イエス・キリストが十字架にかかるまでの一ヶ月余りを受難節(レント)といい、十字架にかかった日が聖金曜日(グッドフライデー)、そして3日後に生き返ったことを祝う復活祭へと続く。

 

受難節から復活祭にかけて、 肉を控えめに、菜食にシフト。 レントの時期は、断食をする人や肉食を控える人などさまざまだが、私が通うホノルル・キリスト教会でも、聖書を読んで黙想する時間を増やしている。チャーチで配られる“祈りの手帳3月”の表紙には、「今日はすべきことがあまりにも多いから、一時間ほど余分に、祈りの時間を取らなければならない」なんてハードボイルドな、マルチン・ルターの言葉が添えられていたりする。ホノルル教会はいつもさりげなく、私を十字架の前に導いてくれている。 そんな折、チャーチの友人が料理人として働く店がカイムキにオープンした。

 

“ビーガン・ヒル”という、完全ベジタリアンのレストランだ。 ベジタリアンというと、ベジタブルが語源だと思っている人が多いが、実はそうではなく、ラテン語のVegetus=活気のある、健全な、という意味に由来している。事実ベジタリアンの中には乳製品がOKの人、卵は食べるという人などさまざま。そんな中でビーガンは完全菜食だ。食事だけでなく、衣食住のすべてに動物性のものを避ける生活を実践している人も少なくない。私もレントの期間中はお肉は控えめにして、野菜中心の食事をしている。“ビーガン・ヒル”の誕生は、まさにドンピシャ。さっそくチャーチの友人や仕事仲間とランチに出かけた。

 

調味料までオーガニックをめざす、 孤高の“ビーガン・ヒル”! サラダもおいしそう、スープもおいしそうと、迷いに迷った末、私が選んだのは“Satori”。玄米ご飯の上に、さまざまな野菜料理がのっているボウルだ。海苔のスープと一緒にサーブされ、途中からおつゆをかけてお茶漬け感覚で食べても2度おいしそう。 生野菜はパリパリに新鮮、自家製のオーガニックドレッシングも軽くてクリーミーでぴったり。クルンとカールしたビーツと人参の赤組は酢の物で、ひじきの黒組はさっと煮で、色も味わいも彩よく。 圧巻はひじきの左隣、こんがり茶色の物体! 外側はカリッ、内側はムチュッと旨味たっぷり。おいしいっ、新感覚のコロッケ!? 聞けば、エリンギを切って下味をつけて、米粉で丸めてオーブンで焼いてあるんだそう。油を使っていないからヘルシーで、米粉だからグルテンフリーで、おまけに香ばしくてコロッケみたいな食べ応えがあって、もう大満足。もとい訂正、大満足の後にデザートのシフォンケーキと驚くほどおいしいコーヒーを飲んでから、大々満足。

なのに頭の中では、次に来た時はココナッツカレーのヌードルにしよう、いやいや隣の席の人が食べているオープンサンドにしようと、めくるめいてしまって。 Satoriの境地にはとてもとても及びませんでした。

 

 

奥山夏実 おくやまなつみ●フリーランスライター
『クロワッサン』の特約記者を25年続け、東京を拠点にハワイは毎年、半年ほど滞在。近著に『ココナッツオイルバイブル1、2』、『HAWAII住むように暮らす』(ホノルルの博文堂でも発売中)など。