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ハワイ金刀比羅神社 醸造感謝祭

神と酒への報謝

 

金刀比羅神社にて、3月5日、醸造感謝祭が行われた。この行事は、毎年、古来から日本人の生活に欠かすことのできない米から酒をもたらした神に感謝する目的で行われる。この日は、近所の氏子たちや告知を見た人々約40人が拝殿内に集まった。

 

参加者たちが拝殿内の椅子に座ると、宮司が神棚に向かい、祝詞(のりと)を唱え、榊を振って神徳を讃える儀式を行なった。独自の節回しによる祝詞の朗唱を初めて聞いた参加者の一人は「唱えているようにも、歌っているようにも聞こえ、耳に心地よく響きます。ハワイ語のチャントにも似ていますね」と興味深そうに感想を述べた。

 

祝詞が終わると共に神楽(かぐら)が流れ、濃紺の帆前垂(ほまえだれ)を着けた一人建の獅子舞が拝殿内に入った。獅子は、神楽に合わせて酔ったような独特の振りを付け、面の口の部分を音を立てて開け閉めしながら参加者たちの間を回った。獅子が神棚へ近づき、何かをねだるような仕草をすると、宮司が御神酒の徳利を持ち、獅子の口の中へ酒を入れるしぐさをした。参加者たちは、ほほえみを浮かべながらこの演舞を見守っていた。その後、日本舞踊家の花柳三津十郎氏が奉納舞を披露。オアフ島出身の三津十郎氏は、1年間、東京の花柳舞踊専門学校で日本舞踊を学んだ。その後、ハヤナギ・ダンシング・アカデミー・ハワイ・ファンデーションにて、踊りの指導と普及に努めている。凛々しい袴姿の三津十郎氏は、澄み切った声で祈りの言葉を唱え、手に持った神楽鈴の音を響かせながら、神楽に合わせて荘厳な舞を奉納した。

 

奉納舞の後、希望する参加者に、榊の小枝に神垂(しで)をたらした玉串が配られた。玉串を持った人は、順番に神棚の前に進み、感謝を込めて玉串を捧げた。捧げる前に一礼、捧げた後にに二拝二拍手一拝を行うが、この手順を知らない人には、氏子が丁寧に教えていた。最後に、参加者全員が宮司の後に付いて、普段は入ることのできない本殿に移動。御神体へ向かって感謝の祈りを捧げ、祭事は無事終了した。

 

神事の後は、拝殿内の庭に設置されたテントで、日本酒の試飲会が行われた。参加者たちは、約10種類の日本酒に舌鼓を打ちながら、供された枝豆や佃煮などをつまみ、互いに交流を楽しんでいた。